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水母の話  2018年3月5日

きたゆうれいくらげ の話

👻 幽霊の 正体見たり 水母かな

傘の直径2.3m、触手長37.0m、重量にして250kgというクラゲが大西洋北方の海にいるという。太平洋にも棲息しているのだが、さほどの大きさではないし、北方で一般ダイバーが潜るような環境ではないから注目を浴びてこなかった。
  北幽霊水母
それでも名称からして、出会うとドキッとさせられるゾという実感溢れた名前がついている。
英語では、ライオンの鬣とか、単純に髪水母と呼ばれており結構よく知られているようだ。(和名に"髪水母"という別種が存在するので紛らわしい。)

当然、この種がクラゲ最大となりそうなものだが、そうは問屋が卸さない。

 大王が 棲んでる所は 深い海

深海巨大生物といえば大王烏賊だが、水母にもそれに負けず劣らずの種がいる。
  大王水母
10mになろうかとういう4本の足を持ち、傘径は4m程度に達していよう。・・・
→ "Ghostly critters from the deep sea: Stygiomedusa gigantea"
 (C)Monterey Bay Aquarium Research Institute@YouTube2015/10/28

一般的には、こうした巨大種、就中、深海棲息の場合は、異端の様相を呈しているものだが、一般に流布している傘と足(口椀と触手)からなるクラゲ型の体躯から外れている訳でもなく、色彩的にも暗い海の色とマッチしているから、"幽霊"と呼ぶほどのものではない感じがする。

いかにも深海らしさを感じさせるのは、赤色が目立つ種の方。

 リンゴ見て 深海の原理 考える

水深750mで発見されたようだ。・・・
  林檎水母
形容が難しい鮮やかな赤色で、写し方によっては林檎の形に見える。目立たないが、傘の縁から非常に細い触手が出ている。

さらに深さを増して、水深600〜1500mになると、暗赤色の種が登場してくる。
  指足水母
烏賊のように太い肉質を感じさせる口椀がある。大王烏賊のモノ真似でもなかろうと思うが。この手の種になると、そうそう簡単に見つかるものではなさそう。

もっとも、深海は赤黒モノというルールがある訳ではない。

 隠れてて いつも雨傘 さしたがる

深度130〜500mでも白色半透明な、いかにも典型的なクラゲも存在する。・・・
  雨傘水母
傘の裏からリボン状の短い口腕が4本あり、傘縁から細い糸状の触手が出ているようだ。傘径は20cmに達するという。勿論、希少種で習性の情報は枯渇しているが、飼育には成功している。
[「加茂水族館でアマガサクラゲ世界初展示」山形新聞2017年03月25日]

マ、色々おりますナ、というところだが、色で注目するなら、一押しはこの種である。・・・

🏊 大群で 沖から来る 困者

日本国内ではどう見られているかよくわからないが、欧米では、紫色で美しいとして絶賛されている種がある。
  沖水母
その実、とてつもなく有害で、恐ろしい水母である。・・・
"KILLER STINGERS: Swarm of deadly jellyfish invades British waters and kills 300,000 salmon---A SWARM of one the most poisonous species of jellyfish in the world is currently skirting Britain's coastline." EXPRESS Dec 16, 2014
"Millions of 'mauve stinger' jellyfish set to hit Med beaches this summer" By NIALL FIRTH MailOnline March 2008
世界中の暖海に分布しているようで、豪州では"purple people eater"と呼ばれるほど。
"Mysterious red jellyfish found on Gold Coast beach" ABC Gold Coast By Damien Larkins and Bern Young 25 Aug 2016

ただ、色といっても、料理サンプル的な素晴らしさでいえば、跳びぬけた完成度を誇る種も。

£ 目玉焼き キミこそ命 愛の素

多くの人は名前は自明と考えるような御姿である。
  サムクラゲ/Fried egg jellyfish
残念ながら、目玉焼水母とは呼ばないようである。もっとも、形状をよくよく眺めれば、同じように北の海に棲んでいる北幽霊水母とたいして変わらない印象。もちろん、かなり大型である。と言っても、よく見ると4本の口腕が目立つから素人的な見方かも知れぬが。(尚、Fried egg jellyfishにはもう1種:別なフループの地中海疣水母。)

バラバラと取り上げたが、これらは漂泳性で、身体が大きくなる水母であり、いかにもクラゲらしい形の一群である。
ただ、ここに所属している、クラゲで一番ポピュラーと思われる種と、色代わりで有名な1種は取り上げなかった。そちらは、稿を改めてということで。

【刺胞動物/Cnidaria
花虫/Anthozoa…ポリプ型(珊瑚, 磯巾着)

Jellyfish/Medusozoa
┼┼鉢虫/Scyphozoa
┼┼┼旗口水母(ミズクラゲ類) Semaeostomeae)
┼┼┼-Cyaneidaeユウレイクラゲ
┼┼┼┼○Cyanea・・・ユウレイクラゲ類
┼┼┼┼┼幽霊水母(nozakii)
┼┼┼┼┼北幽霊水母/Lion's mane jellyfish or Hair jellyfish(capillata)
┼┼┼┼┼Blue jellyfish(lamarckii)@欧州
┼┼┼-Pelagiidae
┼┼┼┼○Chrysaora・・・ヤナギクラゲ類[sea nettle]
┼┼┼┼┼赤水母/Brown jellyfish(melanaster)
┼┼┼┼┼Atlantic sea nettle(quinquecirrha)
┼┼┼┼┼日輪柳水母/Northern sea nettle(melanaster)
┼┼┼┼┼Pacific sea nettle(fuscescens)
┼┼┼┼┼Black sea nettle(chlyos)
┼┼┼┼┼Purple-striped sea nettle(colorata)
┼┼┼┼┼柳水母(helvola )
┼┼┼┼○Dactylometra
┼┼┼┼○Pelagia・・・オキクラゲ類
┼┼┼┼┼沖水母/Purple jellyfish(noctiluca)
┼┼┼┼○Sanderia・・・アマクサクラゲ類
┼┼┼┼┼天草水母/Malaysian jellyfish(malayensis)
┼┼┼-Phacellophoridae
┼┼┼┼○Phacellophora・・・サムクラゲ類
┼┼┼┼┼サム水母/Fried egg jellyfish#1(camtschatica)
┼┼┼-Ulmaridae
┼┼┼┼○Aurelia・・・ミズクラゲ類
┼┼┼┼┼水水母/"common" Jellyfish(aurita)
┼┼┼┼┼北水水母(limbata)
┼┼┼┼┼Moon Jjellyfish(labiata)
┼┼┼┼┼(colpata)
┼┼┼┼┼(maldivensis)
┼┼┼┼┼(solida)
┼┼┼┼○Deepstaria・・・ディープスタリアクラゲ類
┼┼┼┼┼ディープスタリア水母(enigmatica)
┼┼┼┼○Diplulmaris
┼┼┼┼┼(antarctica)@南極洋氷海
┼┼┼┼○Poralia・・・リンゴクラゲ類
┼┼┼┼┼林檎水母(rufescens)
┼┼┼┼○Stygiomedusa・・・ダイオウクラゲ類
┼┼┼┼┼大王水母(gigantea)
┼┼┼┼○Tiburonia・・・ユビアシクラゲ類
┼┼┼┼┼指足水母/Big red jellyfish(granrojo)
┼┼┼┼○Parumbrosa・・・アマガサクラゲ類
┼┼┼┼┼雨傘水母(polylobata)

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