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水母の話  2018年3月26日

サルシアくらげ の話

●●●●● 数珠玉に 巡り合ったら お陀仏だ
  "数珠玉"は"すずこ"と読めば秋の季語になる。

ヒドラ虫花水母の刺糸系を見て来たので、淡水ヒドラを含む有頭系を眺めていこう。言うまでもなく、有頭系とは、触手に珠がついているタイプを指す。刺胞の毒よりは珠に粘着物質をつけて餌を絡め獲ろうという意図がある訳だ。
その代表はこの種でどうか。
  サルシア水母

類縁があって素人にはえらくわかりにくいが、おそらく、"ポリプ体"の研究者がヒドラと呼んでいた種と、"クラゲ体"の研究者が名付けた種が同一だったりするし、同一種にに見えた"ポリプ体"が実は複数の"クラゲ体"だったりしたということではなかろうか。

ただ、サルシア水母は写真を見れば他種との違いが一目瞭然である。
もちろん、触手には珠があるのだが、傘の中央下部から胃のチューブが傘の外部にダラリと垂れ下がっており、もちろんその先っぽが口である。
構造的には成程感がある。餌が珠にひっついたらそこに口をあてて胃腔に引き込むには至極便利そうだからだ。

そこまで胃が飛び出してはいないのが、
  大和サルシア水母
"ポリプ体"からすれば、タマウミヒドラ類に該当するとも言えそう。その構造についてはわかりやすい図絵がある。写真よりピンとくる。
→[PDF] Shin Kubota:"Taxonomic Notes on Polyp and Medusa of Sarsia nipponica Uchida (Hydrozoa : Corynidae) from the Type Locality in Japan"
PUBLICATIONS OF THE SETO MARINE BIOLOGICAL LABORATORY 35(1-3), 1991

触手は結構短いし四方に各1本しかないが、通常の姿勢であると、口の位置からかなり遠いようだ。このことは、拍動によって餌を上手く取り入れる術を身に着けていることになろう。かなりの筋力も持っていそうだ。
その触手の付け根部分に褐色の部分があり、それが眼点。光を感じて、そちらに向かってゆっくりと移動することができるのだと思われる。光が当たる箇所は植物性プランクトンが多く、それを狙った動物性プランクトンが集まってくるので、肉食のクラゲ君はそれを狙うことになる。えらく簡素な視覚器官だが、それで必要十分なのであろう。

"ポリプ体"の特徴も見ておこう。
  珠海ヒドラ

枝わかれしたポリプの群体として棲息している。枝とは、触手のことであり、その先端には玉っコロ。
この粘着性で獲物を捉えるという生態だということになるが、まるで食虫植物。
微小で目立たないから、研究者以外の関心の対象になるような生物ではなさそうだ。しかし、世界中に存在しているそうで、えらくポピューラーな生き物らしい。

マ、"大"といっても、"クラゲ体"の傘の天辺から触手の先までの長さが最大20mmなのである。
  大珠海ヒドラ
本州南岸の研究者には人気がありそうだ。
と言っても、この種に特段の関心がある訳ではなく、この種が出現すると春の訪れを意味するからだ。寒い海での辛い日々もようやく終わりかと嬉しさがこみ上げてくるのは間違いないと見た。

【刺胞動物/Cnidaria
花虫/Anthozoa…ポリプ型(珊瑚, 磯巾着)

Jellyfish/Medusozoa
ヒドロ虫/Hydrozoa
┼┼【Leptolinae】
┼┼水母([無鞘]Anthomedusae(=Athecatae or Stylasterinae)
┼┼┼《有頭:ヒドラ(Hydra)Capitata》
┼┼┼-Corynidae
┼┼┼┼○Coryne・・・タマウミヒドラ類
┼┼┼┼┼珠海ヒドラ(pusilla)
┼┼┼┼┼相模珠海ヒドラ(sagamiensis)
┼┼┼┼┼(japonica)
┼┼┼┼┼(uchidai)
┼┼┼┼○Sarsia・・・サルシアウミヒドラ類
┼┼┼┼┼五目[いつつめ]サルシア水母(polyocellata)
┼┼┼┼┼大サルシア水母(princeps)
┼┼┼┼┼サルシア水母(tubulosa)
┼┼┼┼○Slabberia
┼┼┼┼○Stauridiosarsia
┼┼┼┼┼大和サルシア(nipponica)…旧Sarsia
┼┼┼┼┼数珠水母(ophiogaster)
┼┼┼-Hydrocorynidae
┼┼┼┼○Hydrocoryne・・・オオタマウミヒドラ類
┼┼┼┼┼大珠海ヒドラ(miurensis)

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