表紙 目次 | 尾索動物の話 2018年4月9日 ちゃつぼぼや の話真緑の 茶壺の口を 開き切り尾索動物とは、自律的に尾で泳ぐ能力ありということ。脊椎の前身と目される尾索+尾部神経管がある動物として1つのグループとして認定した訳だ。 と言っても一様とは言いかねる。お玉杓子型で一生を通すタイプだけならわかるが、尾を棄て漂泳生活を続けるタイプや固着するので不要な尾を消滅させたタイプも一緒にされているからだ。 ただ、このグループ全体を俯瞰すれば、袋のようなもの(被嚢)に包まれている点も大きな特徴である。 刺胞動物にしても、袋が萎んで傘になり、内部はゼラチンが詰まり胃腔ができている訳で、その構造自体は格別驚くものではないが、不思議なのはその材質にセルロースが含まれている点。これは植物の構造材。常識的には、動物は作れないし、そのまま摂取しても消化できないから、共生細菌の力を借りて分解しない限り栄養成分にもならない。 動物全体のなかで、極めて例外的なグループであるのは間違いない。 素人発想だと、植物体類似なら、葉緑素による光合成で生きる生物との親和性もありそう、となる。 と言うか、いかにもアレだという群生するホヤがいるのである 茶壺海鞘 この類縁は熱帯〜亜熱帯棲息であり口をポッカリ開けている種なのだが、類縁にも葉緑素を抱えている種が数多く含まれている。 Chlorophyll 青々と 生命の力 感じさせ どいう経緯で、共生を始めることになったのだろうか。 緑粘液海鞘 緑三筋薄海鞘 この葉緑素、"a+b"タイプで緑色植物と同じ。細胞間隙に共生するシアノバクテリアに属す1種(プロクロロン/Prochloron)が光合成に使っているのである。ホヤ側は、光合成に活用できる光線は十分通過させながら、生体に有害な紫外線をカットする機能を発揮しているだけらしい。その紫外線防御物質もシアノバクテリア側から頂戴するそうだ。 [類縁はプロクロロトリックス/Prochlorothrix、プロクロロコッカス/Prochlorococcusと"d+(a)"のアカリオクロリス/Acaryochloris。ちなみに、一般のシアノバクテリアは"a"。] ・・・シアノバクテリアが細胞内共生し、さらなる二次共生から陸上緑色植物へと発展したという定番シナリオの一部に組み込むことは難しいから、独立に発生した共生現象と見るしかないであろう。 [シアノバクテリアの真核細胞内共生シナリオとは、紅藻移入。"a+(c)"となるというもの。それが、クリプト藻へ進み、さらに、緑色植物で"a+b"になる。ここらで、一挙に緑虫(ユーグレナ)"a+b"やハプト藻(渦鞭毛)"a+c+(b)"にも移入。紅藻とは別途の流れとして、褐藻も。こちらは珪藻へと進む。] なんとなく、古い体質の共生関係の印象は与えるが。 調べていないが、簡単にわかるものだけを下記にリスト化してあるが、おそらく未同定で名前がつかない種も多いだろうから、この手の海鞘は30以上あるのではないか。それらは一括して同じグループということになる。 しかし、葉緑体が全く含まれておらず、真っ白で体躯はほとんど同じという種も少なくない。小生は、それらはシアノバクテリアが居つかなくなったのだと見る。バクテリアを上手く受け継ぐことができなかったので、仕方なく自力で生きることにしただけのこと。 全く異なる生物であるから共生が生まれながらにしてできる訳がなく、と言って、稚海鞘の状態でシアノバクテリアの到来を待つことなどおよそ考えられまい。細胞間隙に入り込むのだから誕生時点で親から受け継ぐか、群体構造をシアノバクテリアが利用して移住できる仕掛けが存在するかのどちらか。常識的には前者だろう。 郷愁に 浸っていたら 絶滅だ 葉緑素が全くない種の基本タイプはコレ。 白薄海鞘 姿はほぼ同じでも、真っ白。 【尾索動物/Urochordata or Tunicate】 ┼┼┼◆海鞘[ホヤ]Aplousobranchia@Ascidians ┼┼┼┼《Aplousobranchia》 ┼┼┼┼┼┼: ┼┼┼┼-Didemnidae ┼┼┼┼┼┼┼┼┼†:Prochloron共生種 ┼┼┼┼┼┼┼┼┼*:他のシアノバクテリア共生種 ┼┼┼┼┼○Diplosoma・・・ネンエキボヤ類 ┼┼┼┼┼┼粘液海鞘(mitsukurii) ┼┼┼┼┼┼緑粘液海鞘(midori)† ┼┼┼┼┼┼(virens)† ┼┼┼┼┼┼(simile)† ┼┼┼┼┼┼(gumavirons)† ┼┼┼┼┼┼(ooru)† ┼┼┼┼┼┼(watanabei)† ┼┼┼┼┼┼(similoguwa)† ┼┼┼┼┼┼(variostigmatum)† ┼┼┼┼┼┼(aggregatum)† ┼┼┼┼┼○Lissoclinum・・・シトネボヤ類 ┼┼┼┼┼┼褥海鞘(bistratum)† ┼┼┼┼┼┼(patella)† ┼┼┼┼┼┼(timorense)† ┼┼┼┼┼┼(patura)† ┼┼┼┼┼┼(patella)* ┼┼┼┼┼○Trididemnum・・・ミスジウスボヤ類 ┼┼┼┼┼┼緑三筋薄海鞘(paracyciops)† ┼┼┼┼┼┼(cyclops)† ┼┼┼┼┼┼(miniatum)† ┼┼┼┼┼┼(clinides)* ┼┼┼┼┼┼(nubilum)* ┼┼┼┼┼┼(solidum)* ┼┼┼┼┼○Didemnum・・・ウスボヤ類 ┼┼┼┼┼┼白薄海鞘/White colonial tunicate(moseleyi) ┼┼┼┼┼┼茶壺海鞘/Molle sea squirt(molle)† ┼┼┼┼┼┼乳房海鞘(misakiense) ┼┼┼┼┼┼墨染海鞘(translucidum) ┼┼┼┼┼○Leptoclinides・・・カタウスボヤ類 ┼┼┼┼┼┼棘片薄海鞘(echinatus) ┼┼┼┼┼┼斑海鞘(madara) ┼┼┼┼┼○Polysyncraton・・・ワカレウスボヤ類 ┼┼┼┼┼┼骨無別薄海鞘(aspiculatum) (お正月のイラスト〜家族で餅つき〜[縮小加工]) (C) natomi miwa"イラストレーター なとみ みわ" http://www002.upp.so-net.ne.jp/natomi/index.htm (参考) Dr. Euchi/Luigi:"私たちが新種記載した藻類共生ホヤ (1)" Laboratory of Tunicata and other benthic invertebrates (分類参照) ママでなく、素人が改編 JODC(日本海洋データセンター)GODAC/JAMSTEC 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2018 RandDManagement.com |