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2000.7.22
 
 


ドイツ化学企業のゲノム研究での挑戦…


 80年代、米国はおろか、欧州の平均的企業と比べても、バイオテクノロジー分野の研究開発に不熱心に見えるドイツの化学企業は多かった。独の歴史に根ざす、「遺伝子研究」イメージの悪さを引きずるために積極展開できない、と語る人さえいた程である。

 しかし、このような指摘は過去のものになりつつある。

 このような発言をすると、買収・合併策でグローバル・リーダーの地位獲得への果敢な動きを指すと考える人が多い。ライフサイエンスの国際企業に変身したヘキストや、アグリ分野でグローバルな動きに出たシェーリングAG、等である。

 ドイツ化学業界のリーダー3社のうち、確かにヘキストは転身したが、バイエル、BASFはこの動きとは違う。特に、バイエルは、強い医薬品事業を抱えているにもかかわらず、90年代も、化学事業と並存させる従来路線を継承しているかに見えた。
 ところが、90年代後半に、それこそ「逆転ホームラン」を狙うかのように、一挙に遺伝子技術力の向上を狙った施策を打ってきた。

 バイエルは、2000年6月に、遺伝子技術の活用で、医薬品の研究効率を今後年率3割向上させていくと、発表した。ヒトゲノムが解明されてしまうと、一気に応用研究が始まるから、この期を逃がさず飛躍しようという目論見だ。「チャンスは今しか無い。これを逃がせば、2度とチャンスは巡ってはこない。」という確信に基づいた機敏な動きといえよう。(http://www.news.bayer.com/News/news.nsf/ID/NT00007936)

 といっても、バイエルはこの分野では、遅れていると見られていた。

 それでは、どのように先頭集団に入ろうとしたか。

 先端を走るベンチャーの力を借りることにしたのである。ゲノム研究では有名なMillenium Pharmaceuticalsと98年から5年間の契約で、癌や心臓疾患等、7つの疾病分野で、有用遺伝子探索を始めたのだ。発表によれば、この成果が着々とあがっている。
 スタートして14ヶ月後に、疾病に関する36遺伝子が発見され、25のターゲットが同定されてアッセイが進んでいる。4分野では、スクリーニングがほぼ終わり、リードコンパウンドの構造解析も進み、2000年にはすでに開発候補1品が産まれたというのだ。
 従来の医薬品研究では考えられないハイスピードでステージアップが進展している。「理屈では可能だが、実際はまだまだまだ」と見ていた人は顔面蒼白になるだろう。この協同研究では最低30の開発品を目指しているが、予定をはるかに越える可能性が高い。

 Millenium Pharmaceuticalsだけでなく、世界の先頭を走ると見られている欧州のベンチャーLion Bioscienceの米国研究所ともタイアップした。こちらも、予定以上の成果を生み出している。

 要は、バイエルは、最先端を走る研究者の頭脳を協同研究という形で一挙に入手したのである。これで、世界の先頭集団に踊り出たといえよう。


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