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2002.7.12
 
 


インフォマティクスの衝撃…

 熱病のような凄まじい投資は一段落したが、バイオ産業は引き続き熱い領域である。特に、IT(インフォマティクス)技術を活用した医薬品の研究開発活動領域は広がる一方である。

 医薬品研究開発での、革新の第一の波は、自動的に沢山の化学物質をつくるコンビケムの技術、自動的に多量のサンプルをスクリーニングするHTS技術だった。この段階のITは極く普通のソフト開発といえる。

 第二の波で、一挙にインフォマテイクス化した。ゲノム情報から遺伝子情報を読み取り、ターゲットを確定する作業だ。とてつもない多量のデータが解析可能になったため、一挙に実用化した。この技術が発達したおかげで、数多くの医薬品候補が短時間で発見できるようになった。

 第三の波が、SNPsである。患者の特性をゲノム配列から読み取るというものだ。目的は、疾病関連遺伝子の発見、特定医薬品への感度情報(副作用防止や効果極大)収集である。2005年頃には一部の疾病ではデータが揃い始めるから、患者のDNA診断と医薬品投与の関連付けが治療現場で始まると予想される。

 ここまで、発達してくると、第四の波というより、医薬品開発のすべての領域が一挙にインフォマティクス化すると見た方がよい。医薬品の研究の仕組みが大きく変わることになる。

 まずは「ゲノム配列⇒遺伝子発見⇒関係蛋白⇒蛋白構造⇒蛋白機能⇒相互作用」といった一連の機能すべてでバイオ・インフォマティクスが重要な働きをする。同時に、当該蛋白に影響を与える化学物質についてもケモ・インフォマティクスが進歩する。膨大な化学物質データベースから、ターゲットに対してどのような基本骨格の物質が作用するかを決め、副作用低減・効果向上のためにはどのような修飾が必要か、候補物質の作用はどのようになるか、すべてコンピュータ上でシュミレーションできるようになる。その上、見つかった物質の最適合成経路もコンピュータが選択する。初期研究段階では、このようなインフォマテイクスによって、ハイスピードで新薬候補が見つかる。

 インフォマテイクスの衝撃はこれで終わらない。初期研究に引き続く、前臨床業務も大きく変わる。毒性は、インフォマティクスにより、ゲノム情報との連関がつくようになる。試験結果を待たずに、危険な候補は落とすことができる。しかも、ES細胞を用いた試験管データで特定臓器への影響についても、詳細なデータが簡単に得られるようになる。ゲノム組み込み実験動物が簡単に提供されるようになると、実験の質も高まる。情報処理の力で作用機作が詳細に解明される。研究はハイスピードになり、成功確率も急上昇する。

 さらに、臨床に移ると、患者のゲノムプロフィールに合わせた治験が行われる。インフォマティクスで、副作用が減り、当りも増える。当然、投与量設定ミスも減る。成功確率は急上昇する。
 
 要するに、医薬品開発の最初から最後まで、インフォマティクスが本格的にからんでくる。さらには、治療現場でもゲノムプロフィールに合わせた疾病マネジメントが入ってくるようになる。
 以上は「夢」ではない。コンピュータ技術の進歩が著しいため、実現が間近に迫ってきた。


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