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2002.7.25
 
 


in silicoの時代…

 日本はバイオサイエンス領域が特に遅れていると言われているが、21世紀を切り拓く分野で、先端研究が遅れていると解釈すべきではない。
 例えば、慶応大学先端生命科学研究所冨田勝教授をプロジェクトリーダーして、1996年に、細胞内代謝を丸ごとシミュレーションするe-Cellプロジェクトが発足している。(http://www.ttck.keio.ac.jp/IAB/computer-science/)
 このプロジェクトは、酵素反応、膜輸送、遺伝子発現、といった細胞活動をルール化し同時並列にコンピュータ上で実行させ、細胞全体の挙動シミュレーションする意欲的なものだ。すでにヒト赤血球細胞のモデルが完成し、遺伝子欠陥の遺伝病でどのような挙動が現れるか検討できるレベルに達している。(http://www.e-cell.org/)
 世界の先鞭といえる成果だ。といっても、一般に、並列挙動のシュミレーションプログラムはバグだらけの最難関ソフトといわれるから、完成したというものではないかもしれないが。

 プログラムが実用域に達すれば、新薬開発におけるin vitro(試験管内)実験がin silico(コンピュータ上)実験に移り始める。大量実験による最適化が簡単にできるようになる。但し、具体的なシュミレーションには、定量データが不可欠となる。従って、このデータベースが揃うかが、シュミレーションの成果を左右する。日本は国をあげて蛋白質機能の「プロテオーム」に注力しているが、in silico に役立つ代謝機能の「メタボローム」の方は相対的に弱体のようだ。せっかくの先端科学だが、データ不足で応用が進まない恐れもある。

 一方、米国でも、NCRRとNIHの支援を受け、Virtual Cell と呼ばれる同様なコンピュータプログラム開発が進んでいる。(http://www.nrcam.uchc.edu/) 研究の中心はコネチカット大だ。
 しかし、in silico の仕組みつくりではベンチャーのPhysiome Sciences が技術リーダーと言われている。同社は2001年には、コネチカット大からプログラムの特許使用権を取得、技術レベルをさらに高めた。さらにスーパーコンピュータ利用のためにIBMとも提携した。(http://www.physiome.com/code/news/01.08.13.htm)
 ベンチャー企業だけに商用化スピードは速く、すでに血管系モデルが新薬開発に試用されているという。

 米国のビジネス界は動きが機敏だ。日本では、科学界で成果をあげても、それだけで完結してしまう。


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