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2002.11.25
 
 


イネゲノム研究で先行する中国…

 2002年1月、中国が植物ゲノム解析・配列分析で世界第2位の能力を揃えた、との論文が発表された。(Jikun Huang, Scott Rozelle, Carl Pray, and Qinfang Wang;" Plant Biotechnology in China" Science Jan 25 2002: 674-676)
 その実力は、Science誌2002年4月5日号のイネ・ゲノム特集でも示された。中国の研究機関とアグロ分野のメガカンパニー、シンジェンタ(ミリアッドジェネティックスとの共同)がゲノム解析に成功したのである。中国のプロジェクトは、中国科学院ゲノム生物情報センター、中国科学院遺伝・生物学研究所、中国交雑水稲研究開発センター、北京華大遺伝子研究センター、杭州華大遺伝子研究センター、等12機関が参画したという。中国は総力をあげて解析を進めたのである。(http://www.sciencemag.org/feature/data/rice/index.shtml)

 この話しを聞けば、誰でも、中国の研究開発力は日本を凌駕していると思う。ところが、中国先行とは言えない、と語る人がいる。大国中国のスタンドプレーと言いたいらしい。
 一見、現実を直視しない大人気無い態度に見えるが、実は当然の反応だ。

 もともと、中国は、明瞭な「産業」戦略で動いている。一方、日本のイネゲノム研究は、産業の視点からの目的も掲げられてはいるものの、実態は、高密度遺伝子地図作成を目指した純サイエンスプロジェクトだ。そのため、見方が違うのである。

 研究対象を見れば、その違いは歴然となる。

 日本の対象はジャポニカ種。(「日本晴」)
 ところが、中国の研究対象は、「ハイブリッド水稲の父」袁隆平が開発したイネである。(インディカ種)
 言うまでもなく、ハイブリッドは第2次グリーン革命の原動力となった画期的な技術である。中国は、ハイブリッド技術基盤が活用可能なゲノム技術開発を目指しているといえよう。[第1次グリーン革命は低背高稲の育種]
 (袁隆平: http://www.people.com.cn/GB/shehui/212/7928/7946/20020417/711714.html)

 人口に比して農地が少ない中国にとって、単位面積辺り高収量イネの開発は最重要課題だ。人口増が続いているから、食糧安全保証上、緊急課題でもある。この課題を解決する切り札は、ハイブリッド利用とゲノム操作だ。
 すでに、ハイブリッド技術では素晴らしい成果をあげ続けてきた。技術力は圧倒的といえる。日本の専門家が予想した収量上限を突破しているほどだ。[2002年1月、実験栽培で世界最高収量12ton/ha実現と発表](http://japanese.cri.com.cn/japan/2002/Jan/39186.htm)

 このようなハイブリッド品種のゲノムを解読し、高収穫遺伝子を特定できれば、次々と画期的な品種を創出できる。従って、中国にとって、ハイブリッドの遺伝子解明先行は至上命題といえる。

 例えば、10%収量が向上しただけで、中国国内だけで、日本の生産量に匹敵する増収になる。しかも、アジア地区の経済基盤はイネ農業だ。稲作生産性向上のインパクトは極めて大きい。

 中国にとって、イネ種子の研究開発競争とは、国の浮沈を賭けた戦いなのである。


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