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2003.2.27
 
 


インフォマティクスの遅れ(3:モチーフ検索)…

 ホモロジー検索とORF検索を「古典的」と呼ぶのは、事例データとの類似性だけを追求する手法だからである。
 それでは、非「古典的」な手法とはどのようなものか。

 新しい波は、遺伝子配列モデル構造に基づく検索手法といえよう。こちらは、モデルを作成する過程で、研究者の知恵をいくらでも組み込める。
 これなら、遅れて出発しても、斬新なモデルを考え付けば、先行できる可能性がある。又、当該モデルに合わせた探索手法を開発すれば、パフォーマンスも大きく変化する。創造性が生かせそうな範囲が広いのである。

 といっても、科学の進歩はすぐには進まない。
 モデルといっても、まだ知識が不足しているから、最初は簡単なものから出発せざるを得ない。モデル作りや、探索方法の検討を続けているうちに、どのように考えるとよいのかわかると、始めて創造性が十二分に発揮できるのだ。
 従って、知恵を生かせる土壌作りのために、とりあえずは検索基盤を整備することが必要なのである。そのうち、必ず、画期的なモデルや方法が見つかると考えられる。

 こうした動きの第一歩が、配列パターンで探索する方法、モチーフ検索、である。

 モチーフ検索の理屈は単純明快である。・・・重要機能情報は遺伝子配列に保存されていると考えられる。それなら、すでにわかっている遺伝子には、共通的に出現する配列パターン(モチーフ)がある筈だ。(重要情報を保存する場合の配列の特徴探索ともいえる。)この考えが妥当なら、モチーフに適合する配列があれば、その箇所は、遺伝子機能部分だろう、という理屈である。
 この方法では、配列パターンに関する研究者の知恵を組み込める。しかも、どのようなパターンを、どのように適応すべきか、という様々な工夫もできる。
 従って、単純な大量データ処理による先行競争ではなくなる。どのように検索すべきかが、検索量より重要になるからだ。しかも、探索のアルゴリズムで成果が大きく左右される。研究者の創造力が期待される訳だ。

 といっても、膨大な情報量になるから、研究基盤整備には大きな投資が必要となる。この方法の核であるモチーフのデータベース構築が必要となるからだ。例えば、「PROSITE」のように先行して蓄積されてきたデータベースがあるが、これを用いるのがよいともいえない。考え方が違えば、別のデータベースが登場してもおかしくない。又、研究対象によって独立したデータベースもできる。統一したものがベストともいえないのである。

 例えば、ヒト以外のゲノム研究からブレークスルーが生まれる可能性もある。一方、ヒトで徹底的に検索すれば、価値ある情報が得られるかもしれない。様々なシナリオが考えられ、現段階では、最善策など存在しないといえる。
 従って、世界の情勢をいくら検討したところで、どの分野をどのように強化すべきかは見えてこない。方針設定に必要なのは、思想性に基づいた全体構想であり、個々の分野での競争力や現時点での重要性をまとめた上での、総合判断ではないからだ。

 このため、調整能力しかない政策責任者や、分野毎の専門家が集まっても、方針作成はできない。にもかかわらず、戦略方針が打ち出せるのは、単純な立脚点で方針を議論するからだ。
 「どこかに強い分野を作ろう」、「まるっきり遅れている分野を無くそう」、「力まかせに検索できる分野では、負けないように注力しよう」、といった発想で考えているのである。この発想では、戦略的構想は生まれない。個別分野で職人型の優れた研究者は登場するだろうが、総体としの力は発揮できないのである。

 こうした、方針策定上の問題もさることながら、日本の基盤力の欠如も問題である。

 モチーフ検索作業は知恵を生かせるといっても、実際には膨大な処理量のルーチン型作業が必要である。実際、1000を越えるモチーフがあるから、これらすべての同時処理はとてつもない処理量になる。コンピュータの力量を考えれば、実践的な検索プログラム開発が鍵を握るといえよう。  当然ながら、これは、数理科学/アルゴリズムの世界での競争になる。
 日本は、もともとこの分野の研究者人口が小さい上に、バイオインファオマティクスに集中している訳でもないから、世界での競争で見ればかなり劣位である。これが、日本のアキレス腱といえる。

 アルゴリズム適用こそバイオインフォマティクスの基礎力である。この分野の強化なくして将来は切り拓くことなどできない。
 この分野で力が発揮できなければ、海外の方法論を輸入し、大量のルーチン型実験に勤しむ研究者しかいない状況になりかねない。極めて重要な分野なのである。
 この分野をどう強化するかが見えない限り、研究開発費を増額しても成果は限定的といえよう。

 例えば、アルゴリズム適応力強化を行うために、ヒト/モノ/カネをモチーフ検索へ集中投入すべき、とは言い難い。弱いから、ヒト/モノ/カネを注ぎ込もうとの、戦略発想が欠如した動きは、マイナス効果の方が大きいからだ。   

   過去記載の
   ・「インフォマティクスの遅れ(1:ホモロジー検索)」へ (20030225)
   ・「インフォマティクスの遅れ(2:古典的技法)」へ (20030226)


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