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2004.1.25
 
 


低迷する動物工場…

 1990年代は、遺伝子組み換え技術を用いて動物工場(transgenic技術) を実現する話がもちきりだったが、最近はめっきり下火である。
 2003年6月に、リーダーと目されるPPL Therapeuticsが、羊の乳から作った「Alpha-1 Antitrypsin」(嚢胞性線維腫の治療薬) の臨床試験をフェーズIIで中断する決断を下したこともあり、思った以上に困難なことがわかったせいでもある。
 (血漿由来の新製品が上市にこぎつけそうな上、治療効果抜群の新療法の臨床試験が始まっているため、これ以上の注力を避けたのだろう。)
  (http://www.alphaone.org/research/clinical_trials/ongoing_clinical_trials_5.03.html)

 1991年には、世界初の成分生産羊「Tracy」を作出し、1996年からは臨床試験を始めていたので、注目されていたプロジェクトである。おそらく、純度問題が発生し進捗がおもわしくなかったのだろう。
  (http://www.ppl-therapeutics.com/news/news_1_content_56.asp?page=welcome)

 PPLは、1997年に、世界中に衝撃をもたらしたクローン羊「Dolly」を誕生させたRoslin Instituteとタイアップしており、技術で先頭を走ってきたのは間違いない。それでも、実用化のハードルは思った以上に高かったのである。

 「Dolly」の7ヶ月後には、血液凝固第IX因子を作る遺伝子が組み込まれたクローン羊「Polly」も生まれた。理論上、少数の羊を飼って、その乳から成分を抽出するだけで、世界の需要に応えることができる技術基盤が整ったのである。
 乳なら主要蛋白はカゼインなので分離は簡単であり、人の血液から成分を抽出する際の煩雑なプロセス無しで、複雑な蛋白を製造することができる。安価で大量生産できる仕組みが動き始める筈だった。
  (http://www.fsbassociates.com/fsg/secondcreation.htm#reviews)

 トランスジェニックマウスは誰でも使える技術になってしまったため、この技術の難しい点もよく知られている。遺伝子を組み込んでも、世代を通じて伝わることは稀なのである。クローン羊「Polly」は、この問題を一気に解決できることを示したのである。
 画期的な技術が登場したのは間違いないのだ。

 しかし、未熟な点や、解決すべき問題がまだ残っていることがわかってしまった。

 といっても、乳から成分を抽出するだけなら、米国のGTC Biotherapeutics(旧Genzyme Transgenics)が60種以上の物質を生産できる状態にある。
  (http://www.gtc-bio.com/about.html)

 GTCは、マウスの乳中でのモノクローナル抗体の産出に世界で初めて成功し、1995年には山羊でも成功している。ヒトAntithrombin IIIの商業規模生産もいち早く実現するなど、先端を走ってきた。
 しかし、未だにフェーズIIIであり、慎重な検討が続いているようだ。
  (http://www.clinicaltrials.gov/ct/show/NCT00056550?order=6)

 とはいえ、2004年には欧州で認可される可能性があるそうだから、どうやらハードルは越えたようだが、認可は容易ではないことがわかってきた。

 ということは、他の方法で生産することが可能なモノクローナル抗体やヒトSerum Albuminを、動物工場で生産する意味は薄い、と言えそうだ。

 動物工場の開発テーマとしては、マラリアワクチンのように、他の方法ではなかなか開発できそうにないものが適当、ということになりそうだ。


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