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2004.2.4
 
 


糖尿病抑制技術(2:節約遺伝子理論の活用)…

 日本人の場合、体型を示す指標(BMI)で肥満を抑制する運動を繰り広げても、糖尿病発症抑制には意味が薄いと述べた。
 (BMIが22で一番長生きできる。しかし、25を越えると肥満で、糖尿病になりやすい。このような、狭い範囲の指標が機能するとは思えないのだが。)
   → 「1:BMIの疑問」

 日本人は、欧米人とは違うリスクを抱えているからだ。

 このことは、ゲノム解析の成果からも、明白と言えそうだ。一昔前の節約遺伝子仮説の実証の見込みが、ようやくついてきたのである。
 [節約遺伝子を持つ人は、飽食の時代に入ると、肥満になり易く、糖尿病発症リスクを抱えるという説]
  (Neel, JV:「Diabetes mellitus: a "thrifty" genotype rendered detrimental by "progress"?」Am. J. HumGenet 14;353―362, 1962)

 食糧不足時代を生き抜いた人種が持つ遺伝子との理屈の正当性に疑問はあるが、体質差の原因が遺伝子であるとの理屈は説得性が高い。

 少なくとも、肉食主体で脂肪摂取量が多い欧米人と、脂肪摂取量が少ない日本人の体質が違うのは事実である。
 欧米人は肥満になり易いが、インスリン分泌量も多いため、太っている割には糖尿病が発症しにくい。但し、余りに肥満になると、分泌が追いつかないから発症する。・・・というのも現実そのものである。
 一方、日本人は、健常人でも、インスリン分泌量が少ない。脂肪摂取量が少ないから、これで十分なのである。ところが、ちょっと小太りになると、すぐに分泌量が不足してしまう。糖尿病が発症し易い訳だ。・・・これも当っている。
 こうした体質差が遺伝子であることも、間違いあるまい。

 しかし、問題は遺伝子がはっきりしない点にある。
 研究が進むにつれ、糖尿病に関係する遺伝子が次々と提起されたのだ。お蔭で、素人には理解しがたい状況になってしまった。
  (Neel, JV:「The“thrifty genotype”in 1998」Nutr. Rev. 57;S2―9, 1999)

 糖尿病に関係しそうなものは、すでに40種以上報告されているようである。
 ・ インシュリン抵抗性遺伝子
 ・ レプチン抵抗性遺伝子
 ・ 脂肪細胞系遺伝子
(β3adrenergic receptor, PPARα,・・・)

 これだけ遺伝子が多いということは、様々な要因が重なりあって、体質ができあがっている、と見るしかあるまい。
 この絡まりあった状況を整理できる理論が求められている訳だ。

 一見、かなり難しそうだが、方策がない訳ではない。数理科学で言えば、多因子解析法にに当る、「罹患同胞対法」でゲノムを解析すればよいのである。
 実験データが集まり、閃きが生まれれば、全体像が突然わかってくる筈である。

 そして、すでにその端緒は見えてきたようだ。
 (といっても、薬剤開発と直接つながる研究ばかりだから、解明度合の評価は難しいが。)

 こうした成果は、できる限り早く取り入れるべきだと思う。

 少なくとも、節約遺伝子がわかってきたのだから、個人の代謝特質が見える筈だ。つまり、遺伝子診断を進めることで、標準の所用カロリーより、どの程度節約できるかが推定できる筈である。
 太りにくい体質で、高脂肪食で糖尿病になり易い、との警告を与えることができるだけでも、相当な意味があるのではないだろうか。
 今の、肥満抑制策は、痩せの大食いと、みず太り体質の人を同列に扱う。その上、かなり太っても発症しない人もいるし、痩せ気味で少し脂肪がついただけで発症する人もいる。
 全員に、同じ指標で、肥満抑制を勧めるのは、かなり無理な対策といわざるを得まい。
 すでに、かなりのレベルまで、体質がわかってきたのだから、こうした知識だけでも、広げていくべきだろう。

 ところが、このような早めの動きを嫌う人は多い。しっかりした理論が出るまで待て、と言う。

 一理ある主張に聞こえるが、この分野で理論の正当性を待っていたら、とても対処などできない。

 コレステロール問題を見ればよくわかる。
 総コレステロール量が多いことがリスクとされていたのが、こんどは、悪玉と善玉の比に変わった。量を減らすと、寿命が短くなるとの説も登場した。
 学問は進歩する。対立した理論が並ぶなら別だが、ほぼ正当そうで、間違っても大きな弊害がなさそうなら、とりあえず進む方がよいのである。

 実際、もうかなりのところまで、作用メカニズムはわかっていると言えるのではなかろうか。

 脂肪細胞が肥大化し、各種のサイトカイン/レプチン/遊離脂肪酸を過剰に分泌し始めると、筋肉と肝臓が影響を受け、インスリン分泌能力が落ちる。これにより、糖尿病等が生まれるという見方が、確立しつつあるといえよう。
 これに合わせた対処策も生まれつつある。
  (http://wwwsoc.nii.ac.jp/tjps/kyoto/fpj/TOC01-118(5)/01-118-321.html)


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