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2005.6.22
 
 


臨床治験が嫌われる国…

 アジア地域(APECメンバー国)における臨床治験プロジェクトの総括管理はシンガポールで、が常識化してきた。
 実際、製薬業界の大手企業が次々とBiopolisで治験センターを開設している。(1)

 すでに、CRO(Contract Research Organization)も揃っており、極めて効率的な開発ができる状態だ。(2)

 新薬開発には膨大なお金がかかるから、早く資金を回収するためにも、世界同時上市体制は不可欠だ。
 この体制の要石となるのが治験センターである。当然ながら、優れた治験センターがプロジェクト全体の動きを決めていくことになる。

 ところが、日本には、シンガポールのような治験センターが無い。

 そのため、日本の医薬品市場は米国に次いで世界2位の規模であっても、日本をアジア全体の拠点にしようと考える人は稀なのである。

 それどころか、国際臨床試験に日本を加えない可能性さえある。

 明確なルールで運営する仕組みを欠く国という印象があるから、この傾向はさらに進むと思われる。
 日本を組み込んで、下手に足を引っ張られるより、日本を特別扱いにして、後で臨床試験をした方がよいと考える人もいるのである。

 疾病領域にもよるが、大規模臨床試験実施のインフラなど無きに等しいし、質の高い臨床治験に対応できる医師の数も限られている。育成の仕組みに至っては、聞いたことさえない。

 そもそも、臨床試験の前半(フェーズI〜IIa)を誰が責任を持って担当しているのか、日本では、よくわからないことが多い。
 この部分は研究者がリーダーシップを発揮すべきところであり、これに対応できる先端病院や研究型医療機関が揃っていなければ、質の高い治験などできる筈がないのである。
 そして、言うまでもないことだが、この研究開発を支援する仕組みが不可欠だ。
 ここも極めて弱体である。

 この後は、マーケティングも絡むから、企業がプロジェクトを主導するのは当たり前だが、核となる治験実施病院が必要だ。

 従って、医療の質の向上と、研究開発力強化を本気で追求しているシンガポールのような国は、このような仕組みを構築しようと努力してきた。
 一方、日本では、合理的な仕組みを避けたい人が多いから、このような方向には進まない。
 お陰で、日本は治験の質が高いと語った人お目にかかったことがない。

 質の問題だけではない。
 日本の治験コストは欧米の2倍以上と、異常に高いのである。(3)
 これを変えたくない人は多い。もちろん、製薬企業もこのなかに含まれる。非合理な仕組みのなかで、上手く運営するノウハウを持っていれば、競争力が発揮できるからだ。

 このような状況を見ていれば、開発力がある企業なら、できれば、日本での治験は後回しにしたいと考えるだろう。

 しかし、そう考えていても、現実にはなかなか踏み切れない。
 グローバル展開を視野に入れている日本企業にフラストレーションが溜まっている感じがする。

 --- 参照 ---
(1) http://www.biomed-singapore.com/bms/sg/en_uk/index/about_biomedical_sciences/clinical_development.html
  AstraZeneca, Aventis, Eli Lilly, GlaxoSmithKline, Merck & Co, Novartis, Novo Nordisk, Sanofi-Synthelabo and Schering-Plough
(2) Covance, Quintiles, ICONといったところ.
  欧州の優れたCRO(2004年) http://www.pharmanet.com/pdf/Top_CRO.pdf
(3) http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/04/dl/s0420-6c.pdf


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