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■■■ ジャータカを知る [2019.3.9] ■■■
[1] 南伝仏教"聖典"

「ジャータカJātaka/佛説本生經」は、全547話のパーリ語南伝仏教"聖典"。推定では、紀元前1世紀作成。話自体は紀元前3世紀頃成立とか。根拠は調べていないのでわからないが。
おそらく、早くに中国に伝来したと思われるが、全訳経典は残っていないようだ。従って、どのように日本に渡来したかは定かではないものの、早くからお話は伝わっていたようである。

その内容は、仏陀の六道巡行善行功徳譚集。様々な姿での前世で功徳と積んできたからこそ、その結果として、今、解脱することができたという因果論が土台。
日本列島の古代住民に六道的精神土壌があったとは思わないが、ヒトは死すと祖霊となり、そのうち誰かの子宮に宿り再び産まれてくるという観念はあったらしいから、「前世観」にはそれほど違和感はなかっただろう。従って、素直に受け取られたのではあるまいか。
その辺りが、仏教が日本に定着できた理由の1つではないかと思う。

ジャータカの漢訳を眺めて見ると詩篇集に映る。そのため、"教典"と言うより、仏伝"文学書"に近い印象を持つ。しかし、その観点で評価されてはいないようだ。
普通は、当時のインド社会の実情を題材にした、ご教訓や逸話、お伽話や卑俗な話、はたまた頓智や皮肉笑話集とされている。つまり、民衆への仏教思想普及用のお話として作成されたとの見方。そうかも知れぬという気にもなる。
インド社会は、「ベーダ経典」で規定される神々より、二大叙事詩に関係する神々への方に信仰が集まる風土だから。

ただ、普通は、抜粋した話を簡略化し童話化されて紹介されることが多い。もちろん、翻案化された話も少なくない。
そのなかにはよく知られている話も。
 「今昔物語」 「日本霊異記」 「宇治拾遺物語」 「古今著聞集」
 「冥報記」
 「千一夜物語」
 「イソップ寓話」 「グリム童話」


ともあれ、原典では、どの話でも、釈迦が過去生として、ママの菩薩(修行者)の姿か、天人(神)、仙人、婆羅門、学者、国王、大臣、長者、商人、職人、一般庶民、盗賊、牛、象、鹿、猿、兎、孔雀、魚、樹木、等々とありとあらゆる姿となって登場してくる。大衆の《輪廻》観に合わせたのだと思われる。

要するに、生きていた時の《善悪》の応報で死後(生まれ変わり)の状況(境遇)が決まるという《因果》が示される訳だ。
但し、ここにおける《善悪》判定基準については語られていない。良かれと思っていても、見方を変えれば逆転することがある訳で、そこらについてどう考えるべきかはわからないまま。つまり、そこに関心を向けさせるストーリーではなく、菩薩は、どんな困難に遭遇しようと、賢い判断を下し、強い力を発揮して状況を切り拓くことができるという筋に集約されてしまうのだ。
その点からすれば、確かに、これは"教典"である。

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