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■■■ 今昔物語集の由来 [2019.7.27] ■■■
[27] "羅生門"
ほとんど無名だった「今昔物語集:に光を当てたのは芥川竜之介だが、今でも有名な作品と言えば"羅生門"だろう。もっとも、それは黒澤明の映画のタイトルであって、翻案シナリオは全く別モノだが。

ただ、いくら筋を変えたところで、巻29から採択したものであれば、殺戮をものともしない盗賊のお話でしかなく、ここから得られるご教訓と言ってもたいしたものではないから、編者もどしどし翻案作品を作って下さいというところかも。

この巻での、芥川作品と源譚を照合すると以下のようになろう。
【本朝世俗部】巻二十九本朝 付悪行(盗賊譚 動物譚)
[巻二十九#_3]不被知人女盗人語…「偸盗」
[巻二十九#18]羅城門登上層見死人盗人語…「羅生門」
[巻二十九#23]具妻行丹波国男於大江山被縛語…「藪の中」

マ、盗賊にやられたといっても、どこまで本当かはよくわからないところがある。以下を盗賊譚集に入れ込んだところがミソ。
[巻二十九#14]九条堀河住女殺夫哭語
 蜜夫と共謀し夫殺し。
 すべて強盗のせいに。
現代でも珍しくもない。盗賊より阿漕と見る人の方が多かろう。

小生が注目するのは、それよりは"女盗人"の存在である。
女の魅力に嵌り、情夫となってしまった男は、徹底的に肉体を鍛え上げられ、精神的に強靭な忍耐力を持つようになる。もちろん、男は強盗稼業に。つまり、女は盗賊団の首領なのである。
この話では、男が帰ると、女も家も消えていたという結末で終わる。格別珍しい話ではないが、男にとってこれは何だったのだろう、ということになる。
はてさて、この譚のご教訓をどうするかネ、という観点で眺めると、実に面白い。

マ、それよりは、盗賊の殺戮は悪行としているが、その盗賊取り締まり役のしていることは悪行ではないのか、と言うお話が入っているのには恐れ入る。
サロン談義にはよくある話題でしかないが、こんなことを書籍化して身が危うくないのか、と思ってしまう。唐の書「酉陽雑俎」と同じで、ギリギリのところをどうしても書いておきたかったのだろう。
以下のような譚が該当する。・・・

[巻二十九#_1]西市蔵入盗人語
 盗人が酉市の蔵に侵入したが、包囲されてしまう。
 すると検非違使を呼びよせ、その判官と密談。
 判官は、急いで天皇に奏上。
 宣旨がでて、盗人は解放。
 「此レ世ニ無キ事也」と。
なんだ、盗賊と天皇はグルなのか。

[巻二十九#_6]放免共為強盗入人家被捕語
"放免"とは、鬼平犯科帳でよく使われている、刑期終了後か刑減免で一般生活者になってはいるが、実は犯人お上に使われる探索要員。つまり、実質的には検非違使庁の最下層者。
 下衆が、放免から強盗の手引きをするように言われた。
 一応、協力姿勢をみせておいたが、
 秘密裏にその旨主人に伝えておいた。
 そうとは知らず放免の盗賊団は押し入り一網打尽。
 全員射殺された。
検非違使庁は名目上は犯罪者検挙組織だが、犯罪者集団も抱え込んでいたのである。

[巻二十九#15]検非違使盗糸被見顕語
 検非違使が盗み。しかし、結局、不問。

[巻二十九#26]日向守□□殺書生語
みかけ盗賊譚ではないが、やってきたことが表だって書かれていないだけで同じ。この場合、流石に、伏字である。
 様々な悪事を働いてきた日向守が任期満了。
 隠蔽工作が必要となった。
 丁度、書生が有能だったので、公文書を偽造させた。
 上首尾に完了。
 口封じのために、その書生は殺されてしまった。
いつの世でもよくあること。もっとも、本場は、昔から中華帝国だが。

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