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■■■ 今昔物語集の由来 [2019.11.5] ■■■
[128] 魚食無罪
「今昔物語集」編纂者の考え方がご教訓に現れていそうな譚がある。
  【本朝仏法部】巻十二本朝 付仏法(斎会の縁起/功徳 仏像・仏典の功徳)
  [巻十二#27]魚化成法花経語
 仏法を修行して、身を助けむが為には、
 諸の毒を食ふと云ふとも、返て薬と成る。
 諸の肉を食ふと云ふとも、
 罪を犯すに非ずと知るべし。


ドグマ的な肉食禁忌は間違いであるとの主張である。

一般に、ご教訓部分の役割は色々で、このような考えもあると、批判的な目で書いてあることもあるので、なんとも言えない訳だが。

すでに見てきたように、妻帯肉食の法師に対する姿勢や、阿弥陀仏に帰依し、称名だけで西方に進む純朴な男にこそ、信仰の原点があると見ていそうだから、小生はそう確信するのである。

 大和吉野山の海部峰にある山寺の僧、749〜758年頃の話。
 長年住んでおり、心身清浄にして、仏道修行の生活。
 ところが、この聖人が病にかかり衰弱。
 起居もままならず、
 飲食も自由に出来なくなってきたので、
 命も危険にさらされていた。
 そこで聖人は決心する。・・・
  病で仏道修行に堪えられない身体になってしまったが
  病を治して修行をしたいもの。
  治癒には、肉食に優る方法はないと言われており
  私は魚を食べてみようと思う。
  これは重罪ではなかろう。
 弟子と相談し、魚を購入し、それを食べることに。
 弟子は、すぐに、紀伊の海辺に一人の童子を行かせ
 魚を買ってくるように命じた。
 童子は、新鮮な鯔
[名吉]八匹を買い、
 小さな櫃に入れて帰途へ。
 その途中、顔見知りの男三人と会ってしまった。
 男は童子に荷物は何だと尋ねたのである。
 童子は本当のことを言うのはまずいと考え
 思い付きで、法華経と答えた。
 しかし、小さな櫃からは汁が垂れ、臭いのである。
 魚以外に考えられないので、そう指摘しても
 童子はあくまでもお経と言い張る。
 言い争いながら歩いて行くと市にさしかかった。
 男は、それならここで開けて見せよと。
 しかし、童子は開けようとしないので
 ついに強引に開けてしまった。
 童子は恥ずかしく思ったが、
 中身は法華経八巻だったのである。
 男達は怖れて去って行った。
 一方、童子は喜んで帰って行った。
 ただ、一人の男だけ、童子の跡をつけていった。
 正体を見てやろうと言うことで。
 童子は返ると早速に、師の聖人に報告。
 聖人は、天にお護り頂いた、と大いに喜び、
 この魚を食べたのである。
 それを見ていた男は、聖人に対して五体投地し
 「姿は魚であるものの、
  特別な食べ物ですから、
  魚がお経に化身したのですね。
  私は、愚かで疑い深く
  因果の道理も知らない者。
  魚買いを責めてしまいました。
  どうか、この罪をお許しください。
  これからは、私の大師として、
  深く敬い供養致しますので。」
 と言い、泣きながら戻って行った。
 そして、聖人の大檀那となり、
 常に山寺に参詣し心から供養するように。


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