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■■■ 今昔物語集の由来 [2019.11.17] ■■■
[140] 宴の松原のバラバラ殺人
宴の松原とは、名前とは違い野外宴会が開催されていた訳ではなく、天覧の騎射・競馬が行われる場所である。観覧する殿舎は武徳殿と呼ばれている。
内裏のすぐ横手に当たるかなり広そうな場所だが、一般人も通行できる場所らしいし、狐が化けるような地でもあるようだ。
もともとそうだったのか、治安悪化がそこまで進んだということかは、よくわからない。

そんな場所で人喰い鬼事件が発生した。

  【本朝世俗部】巻二十七本朝 付霊鬼(変化/怪異譚)
  [巻二十七#_8]於内裏松原成人形女語
 小松の天皇期[830-887年]のこと。
 武徳殿の松原を
 若き女が三人が連れだって内裏の方へと歩いていた。
 八月十七日の夜のことで、月がでて大層明るかった。
 すると、松の木の下から一人の男が出で来て、
 通り過ぎようとしていた女の中の一人に、
 声を掛けて引きとめ、木蔭に誘って、
 女の手を取って話をし始めた。
 他の二人は
 「すぐに話を終わって来るだろう。」
 と立ったままで待っていたが、
 何時までも戻って来ない。
 会話の声も聴こえない。
 「如何したのか?」
 と怪しく思えたので、
 松の下へ行って見ると、女も男も居ない。
 何処へ行ったのかとよく見ると、
 女の足と手だけがバラバラと離れて置いてあった。
 これを見て、驚いて走って逃げたのである。
 衛門の陣に寄り、この由を告げたので、
 陣の者共も驚き、その場所へ行ったのだが、
 屍の本体は見当たらず、足と手だけが残っていた。
 人々が集まって来て、見ては騒ぐ大変な状況になったが、
 鬼が人に化けて女を食った、と言うことに。


内裏のすぐ近くというのに、随分と寂びれた場所という雰囲気である。
そんな場所を夜間、女3名だけで、目的もはっきりせずに歩いているということなら、職業は娼婦以外にありえまい。
手足だけがバラバラに残っている殺人事件発生ということで人が集まってくるが、一般人がわざわざ来るような施設がある場所とは思えず、夜は半ば公然の街娼の地と化していたのでは。

そう考えれば、男に声を掛けられて親しくするのはお客を捕まえる手として当然の習わしであろうが、他の2名が待っていたところを見るとその女性にとっては馴染みだった可能性もあろう。

場所から見て猟奇殺人ではなさそうだし、バラバラにして手足以外を持ち去っているから、突発的殺人の可能性も低そう。
そうなると、この地での街娼活動に対する警告的な計画殺人と見るのが自然だ。
理念上、娼婦はけしからんと言いながら、娼婦と関係を結ぶ生活から足を洗えない、頭デッカチの男の仕業かも。頭を残さなかったのは、女を愛していたことを意味していそう。当然ながら、殺人犯は女の遺骸を抱いて、計画通りに見つかりそうもない場所で自殺。

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