→INDEX ■■■ 今昔物語集の由来 [2020.1.8] ■■■ [192] 追い剥ぎ騙し 下級官人の智慧を描いた話。 盗人を上手く欺いたことに焦点を当てているように映るが、確実に盗賊に襲われるとの予見力の素晴らしさを指摘しているとも言えよう。 殿上人ではない身分だが、衣冠束帯の正装姿で儀式に参加し、夜遅くまで公務に精をだしたのである。 従って、その帰途、貴族の子弟達に立派な装束を狙われるのは自明と見た訳だ。 面白さは、この貴族の子弟の追い剥ぎ団は、先にやられてしまったか、とすぐに納得してしまった点にある。 しかも、馬鹿丁寧な挨拶をされて当然と思っているのだ。 腐敗してしまった貴族社会の一断面を見事に描き切っていると言えよう。 【本朝世俗部】巻二十八本朝 付世俗(滑稽譚) ●[巻二十八#16]阿蘇史値盗人謀遁語 阿蘇の史[下級役人]は、 身長は低いが、 その"魂は極き盗人にてぞ有ける。" 家は西京。 公事で参内し、帰りが夜更けになってしまった。 東の中御門から出て、 車に乗って、大宮を下っている時、 着ている装束をすべて解き、 片端から、皆、畳んでしまい、 畳下の板に直接置き、 その上に畳を敷いた。 裸だが、冠を被り、襪を履き、 畳の上に座っていた。 そうして、二条から西に向かい、美福門辺りを通過する時、 傍から、はらはらと盗人達が出て来た。 車の轅に付いていた、牛飼童を打叩いたので、 童は、牛を見棄てて逃げてしまった。 車の後にいた2〜3人の雑色も、すべて逃げ去ってしまった。 盗人は車に寄って来て、簾を引開けたが、 そこには裸になっているて史が居た。 盗人、奇異と思って、 「どうしたんだ?」と問う。 史は、 「東の大宮で、 こんな風に君達が寄ってまいりまして、 この様に装束すべてを召し取られたのでございます。」と、 笏を手に取って、 やんごとなき人に畏み物申す時のように答えた。 盗人は思わず笑ってしまい、見捨てて行ってしまった。 その後、史は、声を挙げて牛飼童達を呼ぶと、 皆出て来たので、そのまま家に返った。 妻にこの顛末を語ると、 妻は、 「其の盗人にも増たりける心にて御ける。」 と言って、笑った。 (C) 2020 RandDManagement.com →HOME |