→INDEX ■■■ 今昔物語集の由来 [2020.1.15] ■■■ [199] 窃盗に対する刑 そこでの話。 【本朝世俗部】巻二十九本朝 付悪行(盗賊譚 動物譚) ●[巻二十九#10]伯耆国府蔵入盗人被殺語 伯耆守が橘経国だった頃。 凶作で貧窮に直面した年があった。 国府の側に○○院と名付けた蔵があった。 当然ながら、すべて供出しており、空っぽ。 ところが、官吏がその側を通ると、 中から叩く音が聞こえ、 「乾飯を狙った盗人で、 屋根から侵入したが 何も残っておらず 出られなくなってしまった。 餓死でなく、 出て死にたい。」 と言う。 早速、守に報告。 そこで、鍵を開けてみると、 その盗人は40才位で華美な水干着用の男。 放免しようとしたが、 守は蔵の側で晒し物にした。 コメント的な記述で、白状したか放免相当との非難あり、と。風体からすれば、盗みのプロではなかろうと見たのだろう。 ここは、「今昔物語集」編纂者の考え方がわかる書き方がなされている。情状酌量か否かという点から離れて眺めると、ということだが。 そもそも、この巻は悪行譚。しかし、悪行には仏罰ありと話が発展するパターンで描こうとはしていない。 このことは、悪行を懺悔し、善行を積むことで極楽往生祈願との信仰に全面的には帰依していない可能性があろう。 第一義に往生を置かず、先ずは現世で上手に生きるべしという態度が見え隠れしている。 生きていく上で必要なら、窃盗など罪にはあたらぬ見てもおかしくなかろう。実際、置き引き奨励感覚が流れている訳で。 (C) 2020 RandDManagement.com →HOME |