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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.1.20] ■■■
[204] 死霊乗車牽引牛
水死し遺体なき人の死霊は、もと住んでいた家の鬼門に居付き、地獄ではなく、現世で責苦を味和されると解釈するしかなさそうな話が収載されている。
登場人物は、トレースが難しく、よくわからない。

  【本朝世俗部】巻二十七本朝 付霊鬼(変化/怪異譚)
  [巻二十七#26]河内禅師牛為霊被借語
 四条高倉に住む、播磨守佐伯公行の子佐伯の大夫こと"佐大夫"は、
 顕宗の父だが、
 阿波守 藤原定成の供で阿波へ船で下っている途中で水死。
 その佐大夫は河内禅師の親類でもある。
 さて
 この河内禅師のもとに、黄斑模様の牛がいた。
 ある時、知人がこの牛を借り淀へと出かけた。
 樋集橋で牛飼いが車操作に失敗し片側の車輪を橋から落としてしまった。
 引っぱられて車と共に橋から落下しそうなものだが、
 この牛は足を踏んばって立っていたので、
 掛け紐が切れ、車だけが落下し破損。
 その落ちた車には人が乗っていないので、
 人の損害もなかった。
 力のある牛で、凄いと皆褒めた。
 その後も、河内禅師はこの牛を飼い続けていたが
 突如、失踪。
 近くから遠くまで、尋ねても見つからない。
 悩んでいたところ、夢に、死んだ佐大夫が出現。
 海に落ちて死んだ筈なのに、どうして出て来たのか
 夢であっても怖かったが会うことに。
 すると、
 「己は、死後、
  屋敷の丑寅
{東北}隅に居る。
  ところが、
  毎日一度、樋集橋のたもとに行き、
  責苦を受けることになっている。
  しかし、罪は深く。体がとても重くなっている。
  従って、徒歩で行くしかなく、それが極めて苦しい。
  黄斑模様の牛が大変な力持ちと聞き、
  それなら、牛車で行けそうということで、
  お借りさせていただくことにした。
  この後、6日目の朝の巳の刻
[10:00am]には、
  お返し致すので、
  探したりせぬように。」
 と、言われた。
 そこで、目が覚めたのである。
 そして、その通りに、牛が戻ってきた。
 いかにも大仕事をした風情だった。


 ・・・ということは、樋集橋で車が落下した時、佐大夫の霊が行き遇ったということになる。
河内禅師は、極めて恐ろしいこと、と語ったという。

死霊は、毎日、河で溺れる責苦を受けるために、京と外部の境界になっている橋まで通わされるのだろうか。そうなると、桂川にかかる橋であろう。
牛が返って来たところを見ると、死霊はようやくにして地獄に連行されたと思われる。

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