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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.1.31] ■■■
[215] 蒔米
神仏参詣の際には、手向けとして、お賽銭か蒔米というのが慣習だった。現代は後者はほとんど見かけないが。

と言っても、長く続いていた行為を取りやめた訳ではない。

地鎮祭や家祓といった神道儀式では打蒔(=散米)は珍しいものではないからだ。米の霊力で邪悪なモノを追い払い聖域を作り出すには不可欠と考えられて来たことがわかる。

鬼を追い払う節分行事には豆撒きは欠かせないが、散米にも同様な意味があるということ。
そう考えると、お賽銭も、本来的には箱に静かに入れたりせず、撒き散らしていた可能性が高かろう。

その蒔米の効果を描いた譚がある。
  【本朝世俗部】巻二十七本朝 付霊鬼(変化/怪異譚)
  [巻二十七#30]幼児為護枕上蒔米付血語
  幼児を連れ、方違で下京に泊まった人の話。
 その家には幽霊が居るとは知らず、皆、寝てしまった。
 幼児の枕元には灯火をつけ、その傍らには2〜3人が寝ていた。
 乳母が乳を含ませてから、寝たふりをしていると、
 夜半に、塗籠の戸を細目に開けた者がいて
 そこから、身長5寸位で、赤色儀式も装束の五位の者共、10名ほどが
 馬に乗って枕元を通って行った。
 乳母は、怖ろしくなり、打蒔の米を一杯掴んでから、投げつけた。
 すると、その者共は散り散りになり消失。
 その後、さらに怖ろしくなって来たものの、夜が明けて来た。
 枕元を見てみると、投げつけた打蒔の米には、血が付いていた。
 暫くはその家に泊まる予定だったが、
 この出来事で生まれた恐怖を考え中止に。
 この話を聞いた人は、皆、
  「幼時が居る辺りには、必ず打蒔すべし。」
 とのご教訓を口にした。
 もちろん、この乳母を賞賛。


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