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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.2.1] ■■■
[216] 銀器の井戸
器物霊の話はすでに取り上げた。[→]
ただ、その精霊とされる小人を見た、好奇心旺盛な皇子に関心がある可能性もありそうだし、器物霊であると断じた陰陽師の姿勢が気になっているのかも知れず、取り上げた真意はよくわからない。

ただ、一対譚の片割れも器物に係わるから、そこらを話題として取り上げているとはいえる。器物霊とは、器物そのものとか、製作者の魂ではなく、それに拘りをもつ持ち主ではなかろうか、という見方を披歴しているようにも思える。
  【本朝世俗部】巻二十七本朝 付霊鬼(変化/怪異譚)
  [巻二十七#27]白井君銀提入井被取語
 僧 白井の君は故人になったと聞く。
 もともとの住まいは、高辻路の西の洞院にあったが
 その後、烏丸路の東、六角路の北に移った。
 六角堂の丁度後に当たる。
 白井の君は、そこに井戸を掘ることに。
 掘土を投げ上げていると、金属音が聞こえたので、
 近寄ってよく見ると、銀製鋺が入っており、取り置いた。
 その後、これに銀を継ぎ足し、小さい提を打ち出させた。
 ところで、ある時、
 親しい知り合いの備後守 藤原良貞の姫君がやって来て
 その井戸で湯浴みと洗髪。
 従者が、この銀の提を持って来て井戸の筒囲いの上に置き
 水汲む女に水を入れさせたところ
 井戸の中に落としてしまった。
 それを、白井の君も見ていたので。
 人を呼んで、取り上げさせたのだが、
 下に降りても見付からない。
 沈んでしまったのだろうということで、
 人を集めて水を汲み出し探させたが
 どこにも無い。
 「もともの鋺の持ち主である霊が取り返したのだ。」と言うことに。
 銀を加えて取られたことになり、白井の君大損の態。


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