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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.4.1] ■■■
[276] 馳射道
誇り高き侍の話とされている譚が収載されているので見ておこう。
  【本朝世俗部】巻二十九本朝 付悪行(盗賊譚 動物譚)
  [巻二十九#21]紀伊国晴澄値盗人語
登場する坂上晴澄は、10世紀後半の紀伊 伊都郡の人。平維時の郎党。
有名な田村麻呂ではなく、鷹養の子孫と見られている。この頃、坂上氏は、検非違使に職権を奪われ、裁判権も失っていたようで、力がなかったようだ。
  《坂上氏系譜》…直→連→忌寸→大忌寸→大宿禰
[始祖]:渡来系 東漢氏枝族(後漢霊帝子孫)阿知使主

〇都加使主

[氏祖]志拏

〇駒子[n.a.-595年]…崇峻天皇暗殺

〇弓束

〇首名

〇老[n.a.-699年]

〇大国

〇犬養[682-765年]

〇苅田麻呂[727-786年]
├〇[次男]田村麻呂
[六男]鷹養[n.a.-817年]:伊都相賀荘領主…石清水八幡宮勧請⇒相賀八幡神社@橋本

〇氏勝

〇瀧守[n.a.-881年]…歩射名手

 紀伊 伊都の坂上晴澄は"兵の道"を極める誇り高き武者。
 所用で上京。
 敵もいるから、自らも郎党も侍装束の武装姿。
 夜の都大路を進んでいると、
 馬に乗った華やかな公達の行列。
 下馬していると、先払いの者が指示。
 「弓を置き、頭を伏せ、鎮まれ。」
 と触れ回ったのである。
 それに従い、公達も通り過ぎたと思っていると
 坂上晴澄とその郎党達全ての所に、人がやって来て
 頭を押さえつけたのである。
 顔をあげ仰ぎ見ると、
 そこには5〜6人の恐ろし気な甲冑姿の騎乗の武士。
 矢を番えており、動かば殺すと言う。
 盗人の謀略に嵌ってしまったのである。
 皆、打ち臥せられ、引き起こされ身ぐるみ剥がされ、
 弓・胡録、馬・鞍、大刀・刀、履物まで
 全てを奪われてしまった。
 そんなことで、坂上晴澄は語った。
  「どんな盗賊に襲われ、殺されてしまったところで、
   手の限り戦ってならわかるが、
   畏れ屈まされた格好で、奪われるなど、何ということ。
   我が"兵の道"に運が無いということである。」
 そう言ってから後、武者として先頭に立つことはしなくなり
 脇侍役に徹したと。


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