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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.8.6] ■■■
[403] 樹提伽長者
陀國王舍城の長者 樹提伽は訛だと殊底色迦とも記載する。[@「大唐西域記」卷九…長者の本生故裏]佛弟子。猛火[梵:jyotis/樹提]の中から取り出されたので、樹提伽とされる。[「大般涅槃經 (南本:三十六卷)」卷二十八師子吼菩薩品]
(外道と仏教の対立の結果としての事件の顛末。)

「今昔物語集」収載の樹提伽長者の福報譚は、求那跋陀羅[譯]:「佛説樹提伽経」。膨大な富があり、自由気ままに使えたようで、頻婆娑羅王の下で大臣を務めたようである。

  【天竺部】巻二天竺(釈迦の説法)
  [巻二#23]樹提伽長者福報語
 国王が宮殿に居ると、花と手巾が自然と降って来た。
 諸々の大臣・公卿と共に、これは天の感応と喜んだ。
 ところが、樹提伽長者だけは例外。
 そこで国王はその理由を尋ねた。
 すると長者は答えた。
 「花は、家の後にある園に沢山咲いている花から落ち、
  萎んでしまったものが風が吹いて飛ばされただけ。
  宝の巾も多いが、下劣なものが風で吹き寄せられただけ。」と。
 それを聞いて奇異に思ったので
 国王は、大臣・公卿・百官を引き連れ長者の家へ行こうと考え
 不思議の元を見たいので、前もって準備を、と言うと
 家には、衣服・財宝・宮殿等が自然に揃っているので
 特段、用意する必要はないと。
 これ又、奇異と思ったが、
 かくして一行は長者の家に。
 門外に居たのは極めて端正美麗な4名の女。
 訊くと、外門を守る奴婢。
 三重の門があり、庭に入ると、水銀が敷いてあり、
 まるで水のよう。
 さらに進むと、樹提伽の妻が
 百廿重の金銀の帳の中から出て来て、泣涕。
 国王来訪の嬉し涙とおもいきや
 煙が目に染みて哭したとのこと。
 国王はゆるりと長者の家を見ていて、数日たってしまった。
 そこで、王宮から速く帰還して欲しいと奏上。
 長者は、土産に倉を開いて沢山の財宝を与え奉った。
 王宮に戻った国王は、大臣・公卿と議論の上、
 樹提伽は臣下なのに、国王より優れた生活をしており、
 彼を討ち取るべきと決定。
 そして、40万人軍を出兵させ、長者の家を囲んだ。
 すると、すぐに、守護役の力士が一人出てきて
 持っている鉄の杖で40万人の官兵をこらしめたので
 軍兵は悉く倒れ伏してしまった。
 そこに、樹提伽が宝車に乗って出現。
 軍兵が大王の勅命で来たことを知ると、
 哀れんだので、力士は元に戻し王宮に返させた。
 国王は長者の神徳を知り、使者を派遣して、将官し
 咎を許して欲しいと宣ったのである。
 その後、国王と樹提伽は一緒に釈尊のもとに参詣。
 国王は樹提伽の前世の因縁を尋ねた。
 釈尊答える。
 「前世は商人。
  500の同業者と諸々の財を抱え山道を行くと、
  病人に出会ったので、哀れに思い、
  草庵を造り、床を敷き、食を与え、燈明をつけ、養育した。
  この功徳で、今のような報を得たのである。」
 国王は貴しと思い、王宮に返って行った。


【ご教訓】を入れてない。教説用説話なら、間違いなく、仏道邁進の一行が入るところだが、あえて外したのだろう。
本生譚としては、前世の釈尊が登場しないから不完全である。病人に該当することになろうが、そうなると、俗人ではなく比丘としたくなるところだ。

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