→INDEX ■■■ 今昔物語集の由来 [2020.8.10] ■■■ [407] 波斯匿王娘 【天竺部】巻二天竺(釈迦の説法) 《22-25 在家者富貴果》 ●[巻二#24]波斯匿王娘善光女語 ⇒吉迦夜&曇曜[譯]:「雜寶藏經」@472年(全121譚)巻二 (二一)"波斯匿王女善光縁" 波斯匿王に善光という娘がいた。 端正美麗で光輝くほどなので、父母は大切に育てていた。 (原典補足)宮殿中でも慕われていた。…舉宮愛敬 そこで、父は、 「我が力で、汝は愛護されておる。」と言う。 ところが、娘は、 「それは、善悪の報、前世の宿世であり 父王に依る訳ではございません。」とキッパリ。 (原典補足)業…我有業力,不因父王 その言いぶりに、国王は怒り心頭。 (原典補足)「それなら試してみることにする。」…今當試汝有自業力 「それなら、他の所に行け。」ということで、形貌醜い乞丐を召して (原典補足)最も貧しい乞食を捜させ…於此城中,覓一最下貧窮乞人 娘と結婚させた。 (原典補足)「我のお蔭では無いなら明らかにするがよかろう。」 …若汝自有業力不假我者,從今以往,事驗可知。 夫婦は仲良く宮殿を後にした。 妻:「ご両親は?」 夫:「すでに他界。 以前は隣国第一の長者だったが、家は滅んでしまった。 頼る者が無く、こうして乞食をしている。」 (原典補足)舎衛城 妻:「住んでいた処はお分り?」 夫:「場所は分かるが、 塀も建物もすべて崩壊し荒地状態。」 そこで、夫婦揃って、その跡地を訪ね草庵住まい。 周囲一帯を調べ廻ると 地中に隠されていた宝が出て来た。 珍宝なので、人も雇えたし、家も建てることができた。 日を重ね、大勢の奉公人が居るお屋敷になってしまった。 (原典補足)一ヶ月…未盈一月 国王は、娘を思い出し、 どの様な暮らしをしているのか気になってきた。 訊くと、善光ご夫婦の宮殿・財宝は、国王にも勝るほど、との答。 そして、国王は娘のお屋敷を訪問し大変に立派なので感嘆の態となる。 上記ではカットしたが、もちろん、釈尊が因縁の説法を行うシーンが挿入されている。 原典は〆の部分。 王聞佛所説,深達行業,不自矜大,深生信悟,歡喜而去。 「今昔物語集」では、王は説教を聞いてから訪問。そして、めだたしめでたしの大団円。 其の後は、互に行き通ひて、各目出くてぞ過ぎける 巻二は、賢「賢愚因緣經」と百「撰集百緣經」から多くを引いており、ジャータカ的な因縁話満載。[→釈尊初期教説記] この話も、その類であるが、なにか思惑がありそう。 そもそも、縁切りした娘の生活状況に何故に関心を示すのかの説明がない。しかも、経済的に成功すればそれを素晴らしきことと単純に評価する父親とは、いったいどのような性情なのだろう。それに、王でなければ、没落して乞食になり娘から施しを受けるといった手の話にした方が収まりがよい。もっとも、それは夫婦の場合で、親子では避けるのかもしれぬが。 そんな風に考えると、この夫を極貧でなく醜男にしてあるところを、しっかり読み取れということかも。 (C) 2020 RandDManagement.com →HOME |