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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.8.12] ■■■
[409] 商船舵取人
「今昔物語集」の譚題とはイメージが違うタイトルにしてみた。
この譚はなかなかに解釈が難しい。話の内容という意味ではなく、誰が主人公であるかという点で。

常識的には、商船舵取人だが、そう見るなということのようだ。

題名からすれば、"《旅団比丘》教化《竜王》⇒救乗船者命"で、確かにその通りなのだが、普通に読めば、"《商船舵取人》説得《竜王》⇒比丘読誦・竜王聴聞⇒救乗船者命"。説教するのは商船舵取人であり、旅団随行比丘は竜王の恨みをかっているにすぎない。その比丘が居るために、船もろとも乗船者が海の底に引きずり込まれかねないのだ。従って、比丘が果たしている役割がはなはだわかりずらい。
  【天竺部】巻四天竺 付仏後(釈迦入滅後の仏弟子活動)
  《1-15 弟子》
  [巻四#13]天竺人於海中値悪竜人依比丘教免害語
  ⇒住信:「私聚百因縁集/百因縁集」上巻五"天竺道行事"
       (…147譚 巻一-四:天竺,巻五-六:唐土,巻七-九:和朝)
     天竺人行道必具僧守護故昔有一俗人為交易物乗船浮海悪風・・・
○天竺では、旅をする時は、必ず比丘を連れて行く。
 守護してもらうためである。
○ある時、商船で海に乗り出したのだが、
 暴風に遭遇。船は海の底に巻き込まれて行く。
 舵取人が船の下を見ると、そこに優婆塞が居た。
 何者か訊ねると、竜王である、と。
 汝の船を海底に巻き入れるつもり、と言う。
 その理由を問うと、
 前世、人間だった時、我が家に居た比丘が
 乗船しているから、と。
 何年にも渡り、朝も暮れも、その比丘に供養していたのに
 我が罪を犯しているにもかかわらず叱責しないので、
 罪を重ねてしまい蛇道に堕ちてしまい、
 毎日三度釼で切られることになってしまった。
 従って、比丘を殺すことにしたと語る。
 そこで、舵取人は、竜王説得にかかる。
  蛇身となり三熱の苦を受け、
  連日、刀釼の悲を味わされているのは、
  前世の悪業のため。
  ここで、比丘と乗船している人々を殺せば、
  さらなる悪行を重ねることになる。
 それに対し、竜王は語る。
  昔、前後
(因果の法)のことは知らなかった。
  比丘は、教えてもくれなかった。
  だから殺すのだ、と。
 そこで舵取人は、竜王に、一日一夜留まるよう勧めた。
 法の力で蛇道から逃れさせてやる、と言うのである。
 竜王はそれに従うことに。
 比丘は経を読誦し、竜王聴聞。
 たちまち蛇身から、天上に転生。

【ご教訓】「もっぱら善根を積むべし」と親しい人には教えるべきである。

よくわからぬことが多すぎる。
例えば、船を沈めるためにどうして優婆塞になる必要があるのか。それに、悪行内容が記載されていないのでなんとも言い難しだが、比丘への供養程度の善行ではほとんど意味が無いという風にも読める。講に参加することは無いが、"比丘"への供養は善行と考えていそうなのも、いかにも不自然な感じだし。

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