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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.9.17] ■■■
[445] 蘇武
「今昔物語集」編纂者が、震旦国史の巻にどうしても入れ込みたかったと思われる譚をとりあげよう。

その心は、ベストセラー書の「白氏文集」と「文選」の詩が頭にあったと見て。
   「壹字至七字詩 」 白居易
 詩。
 綺美,瑰奇。
 明月夜,落花時。
 能助歡笑,亦傷別離。
 調清金石怨,吟苦鬼神悲。
 天下只應我愛,世間唯有君知。
 自從都尉別蘇句,便到司空送白辭。


   「蘇武李陵贈答五言詩」 @蕭統[編]:「(昭明)文選」[17詩己]巻二十九雜詩上
  李少卿與蘇武詩三首より
 良時不再至,離別在須臾。
 屏營衢路側,執手野踟
 仰視浮雲馳,奄忽互相踰。
 風波一失所,各在天一隅。
 長當從此別,且復立斯須。
 欲因晨風發,送子以賤

  蘇子卿詩四首より
 骨肉縁枝葉,結交亦相因。
 四海皆兄弟,誰為行路人?
 況我連枝樹,與子同一身。
 昔為鴛與鴦,今為參與辰。
 昔者常相近,若胡與秦。
 惟念當離別,恩情日以新。
 鹿鳴思野草,可以嘉賓。
 我有一酒,欲以贈遠人。
 願子留斟酌,敘此平生親。


良く知られる、漢の功臣の話。
(本朝でも、大将軍として、蘓武が良く知られていたことは、後世成立とはいえ「平家物語」巻二にその段を設けていることでよくわかる。)
  【震旦部】巻十震旦 付国史(奇異譚[史書・小説])📖「注好選」依存
  《28-35 国王》
  [巻十#30] 漢武帝蘇武遣胡塞語
  ⇒「注好選」上71蘇武鶴髪
  ⇒「俊頼髄脳」蘇武
 漢 武帝が蘇武を胡塞(塞外の胡国)に派遣。
 蘇武は長らく戻らないまま。
 そこで、衛律を使者にたてる。
 到着すると、蘇武は死去したとのこと。
 嘘であることがわかる。
 そこで、
 常恵の策で、
 蘇武の文を結いつけられた雁が王城に飛来したと追求。
 胡塞の人も、これ以上隠すのは無理とわかり、
 使者と蘇武の対面が実現。


普通語られる話の一部だけだし、えらく簡素な内容な上、「漢書」の筋とも違うが、そんなことは、おそらくどうでもよいのである。
震旦の国史では、この漢 武帝の時代が結節点ですゾと語っているようなもの。ここから震旦国史が始まったことを想起すべしと主張していると言ってもよいかも。

関係する人物を並べると、その意味がおわかりいただけるのではなかろうか。
【前漢の皇帝】
武帝 劉徹_[在位:前141-前87年]
昭帝 劉弗陵[在位:前_87-前74年]
【功臣】
蘇武_[前140-前60年]
 <出使匈奴>
 <牧羊北海>
 <歸漢>
 <上官謀反>
李陵_[n.a.-前74年]
 <兵出居延>
 <血戦而降>
 <家人被誅>
 <未歸漢朝>
【史書家】
司馬遷[前145-前86年]
 <李陵禍>
 <「史記」>
【匈奴の單于】
犁湖 單于[前102-前101年]
侯 單于[前101-前_96年]
狐鹿姑 單于[前_96-前_85年]
壺衍 單于[前_85-前_68年]

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