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2003.9.13
 
 


日本のゴミ処理技術(3:スラグ利用)…

 「官」による規制や指導が自由な経済活動を阻害し、発展余地を狭めたり、歪んだ産業振興に繋がることが多いため、「官」の仕組みのマイナス面ばかりがクローズアップされるが、プラス面もある。
 スラグ利用は、プラスに働いている例としてあげることができよう。

 スラグには、ごみや燃料の燃焼残さを溶融処理したものと、下水汚泥処理後の残さの2種類に分かれる。どちらにせよ、溶融物質だから、その性質に大きな違いがある訳ではない。しかも、物性が比較的安定している。
 このような使い易い性状の資源は廃棄せずに、できる限り利用すべきなのは言うまでもない。
 廃棄に要する直接コストは小さいが、すでに、ゴミの廃棄場所確保のコストが高額に上っている状況を考えると、容積が小さくなっているとはいえ、廃棄しないで済めば、その恩恵は極めて大きい。環境負荷計算などしなくても、スラグ利用拡大のメリットは自明と見てよいだろう。

 しかし、新資源の利用のためには、新しい仕組みが必要だから、放置していれば、いつまでも利用が進まない。

 従って、スラグ利用の促進政策は不可欠である。

 日本では、この政策展開の開始が比較的早くから進んでいる上、「民」の活用も、上手く機能してきたようだ。産業機械メーカーや、公共施設用材料メーカーが、積極的に動いたから、スラグの利用率が90年代後半に急速に高まった。現時点では、おそらく約半分のスラグが使われていると思われる。
 http://www.jsim.or.jp/honbu/senta/ekosurafiles/ekozyouhou.htm

 この分野の技術開発は、原料の素性がはっきりしているから、目標を明確に定めることができる。従って、研究開発はしやすいといえる。
 的確な政策を導入すれば、技術は確実に進歩する分野なのだ。
 例えば、大胆なインセンティブをつけた競争政策を取り入れれば、溶融装置やラグの粉砕/磁選/粒度調整装置は、長寿命かつ低コストオペレーション化が進むだろうし、スラグ応用製品も一挙に増加することは間違いない。
 溶融して固めるだけのプロセスではあるが、資源として利用するつもりなら、このような研究は思った以上に重要といえる。例えば、冷却条件を変えるだけで結晶粒度が変わるから、資源としての価値は大きく変わる。
 資源化に意味があることが判明してくれば、処理過程で除かれる金属物質の活用法や、排出灰の処理技術も急速に進歩する可能性がある。

 ・・・この例を見てもわかるように、日本では、ゴミ処理プロセスの最下流では、技術開発が上手く進む条件が揃っていそうだ。


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