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2003.9.15 |
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日本のゴミ処理技術(5:破綻リスク)…スラグ利用が進んでいる。ここだけ見れば、リサイクルが着々進んでいるのは間違いない。しかし、今の状況では、将来破綻する可能性が高い。・・・と、語ると、矛盾した発言に驚く人が多いかも知れない。しかし、この矛盾こそが環境政策の実態なのである。 背景を解説しておこう。 現在、リサイクルが進んでいるのは、国民の支持もあるが、リサイクル法が後押ししているからである。 この立法は、全体構成が明確である。 総元締めは、1993年制定の環境基本法である。 この土台の上に、2000年に制定された循環型社会形成促進基本法がのる。 さらに、この思想をベースに、2つの法律、再生資源利用法(1991年作成の法律を2000年にリニューアル)と廃棄物処理法(1970年作成の法律を2000年にリニューアル)が制定されている。このリサイクル法が全体を既定しているのだ。 この法律に合わせた具体策が、個別産業の個別廃棄物毎の個別法になる。例えば、容器(1995年制定)、家電(1998年制定)、建設(2000年制定)、食品(2000年制定)、自動車(2002年制定)、という具合だ。廃棄物処理の方は、有害廃棄物、産業廃棄物、というような分類になる。 極めて分かり易い構成だが、リサイクル目標が個別産業の個別廃棄物毎に設定されるため、問題が発生する。 1つは、処理対象と非対象の線引きの曖昧さと、分類に該当しない廃棄物が抜け落ちる点だ。これを指摘して笊法と批判するのは簡単だが、取り締まり強化や、法案整備で簡単に片付くとは思えない。とりあえずの出発点としては、致し方ないと思う。 もう1つが、互いの関連性の欠如である。こちらが、問題なのだ。法律体系上、それぞれの分野でのリサイクルが互いに関連性なく進む可能性が高いからだ。 これだけでは、問題が発生するとは思えないかも知れないが、既定された廃棄物が互いに絡み合うと、個別リサイクルの仕組みが競合しかねないのである。そうなると、分野別のリサイクル目標は空論になりかねない。これが大問題なのである。・・・杞憂ならよいのだが。 この観点で全体を俯瞰すると、建築土木廃材が大きな問題を抱えていることがわかる。 いわゆる、コンクリート/アスファルト塊のリサイクル問題である。この物質は、廃棄物全体に占める割合が極めて大きい。そのため、このリサイクルが破綻すると、他のリサイクルに大きな影響を与えかねない。爆弾を抱えていると言って間違いない。・・・と、語ると驚くかもしれない。 実は、道路/建築物建設から発生するコンクリート/アスファルト塊のリサイクルは、現段階では上手くいっている。全国津々浦々までリサイクルの仕組みできあがっている。しかも、リサイクル率も高い。数字だけなら、優等生である。この成功のお蔭で、滅茶苦茶な砂利採取も無くなったし、処理場の余裕もできたのである。 しかし、この成功は現状の産業構造を前提にしたものだ。官庁のリサイクル政策に合わせれば、ビジネスが維持できる産業構造になっていたから、建築土木業界が安心してリサイクル化を進めることができた、と言える。 ところが、この前提が崩れつつある。この業界はリストラを迫られている。しかも、リサイクル市況は悪くなる。リサイクルが儲からなくなると判明したとたん、現行の仕組みが一気に崩れかねないのだ。まさに爆弾である。 これから10年を考えると、建築土木廃材のリサイクル市場は市況が悪化する可能性が高い。既存の道路/建築物の寿命を考えると、スクラップ増加は間違いない。廃材は増加する。その一方で、リサイクル資源を使う建設量は増えない。ところが、すでに、新品のリサイクル品代替は済んでおり、リサイクル品が大量に入る余地はほとんどない。従って、遠からず需給悪化が到来する。そうなれば、リサイクル業界の態度は一変するに違いない。リサイクルどころではなくなる。 コンクリート/アスファルト塊の量は巨大だからこの問題は深刻である。廃材供給圧力は高まる一方なのだから、コンクリート/アスファルト塊を、利用できそうな分野すべてに投入せざるを得なくなる。 その結果、リサイクル市場全体に大きな影響がでると予想される。 例えば、スラグの利用場面でも、間違いなく、コンクリート/アスファルト塊と競合になる。スラグだけ見ていれば、リサイクルが順調に広がっていくように見えるが、コンクリート/アスファルト塊との競争に直面した途端、状況は突然悪化する。 もちろん、スラグだけではない。ガラス瓶リサイクルも同じ道を辿ることになろう。 もともと瓶市場自体が縮小しているから、ガラス瓶へのリサイクルは望み薄だ。ガラス破砕物(カレット)は、土木建設分野への活用を図るしかないのが実情だ。ここでも、コンクリート/アスファルト塊との競合が発生するだろう。 こうなると、リサイクル品目どうしの熾烈な競争が始まる。個別目標達成どころではなくなるだろう。悪夢のシナリオだが、現実化する可能性は高い。 従って、スラグや破砕ガラスの利用開拓は、思った以上に重要なのである。 環境問題の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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