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2004.1.12
 
 


無神経なごみ施策…

 “私の住んでいる市の役所が、ちっちゃいビニール袋を配ったことがあるのね。何かと思ったら、「一日にほんとに捨てていい量はこれだけです」だって。呆れちゃいました。ただ見せるためだけに何万世帯に配られたそのビニール袋は、どうなっちゃうの?”・・・料理研究家 小林カツ代氏の指摘である。
  (「通販生活」23巻1号付録6頁 2004.2.20)

 おそらく、環境派の共感を呼ぶだろう。

 しかし、ビニール袋配布作戦は見事に成功した、と言えそうだ。
 役所にしてみれば、ごみ減量を叫んでも、さっぱり効果がないし、市民の協力も少ないから、インパクトある施策に賭けたのかもしれない。環境派の反撥を計算して進めた可能性さえある。・・・小林氏のような方々が、役所の無神経さを叫んでくれれば、くれる程あり難いのである。ごみ減量の関心が一気に高まるからである。

 極めてひねくれた見方だが、現在の状況は、そこまで来ている。

 阪神優勝ダイブで有名になった道頓堀川の状況を聞くと、絶望的になる。なんと、この狭い川に、毎年100台を越える自転車/バイクが投棄されているという。しかも、役所は、高額な費用をかけて、毎年川を掃除するのだ。
 この状態で、モラルを訴えたところで、効果があがるとは思えまい。尋常な施策が奏効するレベルを越えている。

 2000年に成立した循環型社会形成推進基本法によって、各自治体はごみのリデュース(発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再生+熱回収)を進めている。
 しかし、自治体によって進め方は全く違う。
 地域によってごみの状況が違うから、自治体毎に進めるのは当然とはいえ、余りにも差異が大きい。本当に機能するのか心配になる。
-- 粗大ごみ料金例 (2003年11月11日) --
品名  大阪市 北九州市 (返品配送料)
風呂ふた  無料  300円 1,260円
コンベクションオーブン  無料  300円 1,470円
アイロン台  無料  300円 1,890円
掃除機  無料  500円 1,680円
エアロバイク  無料 1,000円 3,880円
出典: 「通販生活」23巻1号付録19頁 (2004.2.20)

 そもそも、住民が支払うごみ費用が相当違うのである。

 大阪市では、普通ごみは無料で収集してくれる。
 一方、北九州市は一般ごみは「指定袋」で出さないと収集してくれない。大袋(45リットル)1枚が15円である。

 粗大ごみになると、右表のように、さらに差は開く。
 全く思想が違うシステムなのである。

 北九州市型はごみ減らしに効く仕組みになっている。しかし、処理費を払わない違法投棄が発生するリスクは増す。違法行為防止コストが大きすぎると破綻する可能性はある。
 ともあれ、このシステムの成功は、効率的運営ができるかどうかにかかっていると言えそうだ。行政の能力で成果が決まるのだ。数年後に結果がわかるが、応援したくなる方向である。
 -- 北九州市の方針 --
 ・毎年度、ごみ処理事業に要する経費について、
  収集、焼却等の処理部門別に事業経営的視点から整理し、市民に公表します。
 ・ごみ処理経費全体の50パーセントを占める収集運搬経費について、
  委託のあり方も含めた収集体制の効率化、収集経費の抑制を検討します。
 ・粗大ごみ収集について、
  現行の手数料体系の簡素化など市民にわかりやすく、利用しやすい方法を検討します。
   (http://www.city.kitakyushu.jp/~k2602010/sesaku/syori6.html)

 一方、大阪市が行っている無料収集では、利用者負担がないから、ごみ増加の歯止めは全く無い。こみ減らしはモラルに頼るしかない。行政は、「まちの美化・ごみの減量・資源ごみの収集など、環境事業に対する市民の皆さんの理解を深めていただく」ための普及広報活動を行う以外に打つ手無しだ。
 役所が全てを負担するこのような仕組みが上手く機能するとは思えないが、それしかできない政治状況なのだろう。

 実は、大阪市は、普通ゴミも粗大ゴミもすべて大型で高度な施設で焼却してしまい、残った灰は埋め立てる仕組みを採用している。燃えないごみは直接埋めるだけだ。従って、破砕が不可欠な大物と、それ以外に2分別すれば十分である。運搬し易いように、ごみの大きさで分けるだけの、簡素な仕組みといえる。
 このシステムのために、夢洲埋め立て地や、舞洲ごみ焼却工場(フンデルトワッサーの設計で有名)等に大型投資を敢行してきたのである。もちろん膨大な投資である。
  (http://www.city.osaka.jp/kankyojigyo/sec02/p02_01.html)

 分別や保管のコストが高額化しがちな都市では、効率的な事業運営ができれば、このような全焼却システムが一番低コストになる可能性がある。(大阪市のシステムは低コスト化のインセンティブを組み込んでいないから、上手くいく保証はないが。)
 但し、このシステムには、大きな問題がある。リサイクル等の縛りがでると、簡素な仕組みが、とたんに複雑化する点だ。低コストになるよう設計された仕組みが、突然、高コストなシステムに変わりかねないのである。
 極めてやっかいな問題と言えよう。

 大阪市と北九州市だけ見てみたが、おそらく、日本全国、全く思想が違うごみ処理システムが稼動している。バラバラに動けば、早晩、そこらじゅうで齟齬が生じることになろう。

 こうした状態を見ると、お役所の一番の問題は、小林氏が指摘している、ビニール袋配布のような「無神経さ」ではないと思う。
 環境派に神経を使いすぎているのか、これから発生しそうな問題を語ろうとしないことである。


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