↑ トップ頁へ

2004.3.28
 
 


鶏ふん問題…

 鶏インフルエンザの発生で、養鶏から発生する「ふん」の問題が知られるようになった。「ふん」にウイルスが入っているから、どの様に処理しているのか、急に関心が高まった訳である。

 これをバネに、問題解決への動きが加速すればよいのだが。

 と言うのは、日本の酪農の弱点は、コストだけではないのだ。「ふん」処理が上手くいかないことも大問題なのである。

 典型例として、養鶏業が処理すべき「ふん」はどの程度あるのか、考えてみよう。

 採卵用飼養成鶏羽数(2002年)は1億3,729万羽、人口一人当り、約1.1羽という状況である。(1)
 卵離れが発生しなければ、おそらく、この数字はそう大きく変わるまい。

 ということは、毎日1万トンレベルで「ふん」が生産されているのだ。(2)

 凄まじい量である。
 これを、どう処理するか。

 どのように処理されるのか、ざっと眺めてみよう。

 一番簡単なのは、「生」で廃棄/肥料化する方法だ。効果があり、安全なら、一番安価で簡単な方法である。
 しかし、大量に撒けば、地下水に窒素系物質や大腸菌が混入し、飲用不適になる。
 また撒布場所が生活域に近ければ、悪臭問題は避け難い。
 日本の農村形態では、どう見ても、少量撒布以外、実行できない処理方法である。

 2つ目が、乾燥処理だ。乾けば、「ふん」は固形になり、容易に運搬できる。その上、乾燥鶏ふんは肥料としても、価値が高い。一見、最善の方法に思える。
 しかし、大型鶏舎が生み出す「ふん」を自然乾燥させるには、広い敷地が必要となる。そんなビニールハウスを用意できる業者は少ない。
 そうなると、乾燥能力を有する「ふん」処理業者がを請け負うことになろう。といっても、資産効率が悪いから、昔からの業者以外、注力することはなかろう。

 3つ目の方法は、発酵処理である。乾燥と違って、水分リッチのまま「ふん」を山積みしただけでも、好気性細菌の力で発酵が始まる。山の切り返しをして、空気を入れる程度で処理は可能である。
 要するに、昔から行われている堆肥作りだ。
 しかし、こうした伝統的な発酵処理方法では、とても、大量の「ふん」を処理できまい。
 そうなると、堆肥化装置を導入するしかない。もっとも、装置といっても、加温ヒーターと、機械的切り返し機構を備えた発酵槽だけで十分である。
 この装置で効率化を図るには、閉鎖的なプロセスにすることになる。ところが、閉鎖系にすれば、発酵過程で必ず凄まじい悪臭が発生する。
 臭気を抑えるためには、鋸屑などを混ぜるしかない。上質とは言えないが、使える肥料はできる。

 ・・・といった具合に処理方法を羅列すると、「ふん」を工業的に肥料化する流れが進んでいると考えがちだ。
 この見方は間違いとはいえないが、実は、表層的な対処策の検討でしかない。

 それは何故か?

 どのような処理法を行っても、以下の根本的な問題に対して、無力だからだ。

 1つ目は、問題発生が産業構造に由来している点だ。「ふん」処理が上手くいかないのは、大規模養鶏業者が農業と無縁なためである。生産した「ふん」を、自分達で肥料に使うことが無いのである。

 2つ目は、ほとんどの養鶏業者は経営的余裕が余りないため、自分で処理を行えない点だ。

 このため、ほとんどの生「ふん」が、養鶏業者から処理場に運搬される。
 当然のことながら、コスト高の仕組みである。その上、「ふん」肥料が農業に使われる保証はない。
 肥料は農地の適正量を越えて撒布はできないから、「ふん」肥料の供給が需要を上回ってしまえば、どうしようもないのである。

 その観点で考えれば、おそらく、「ふん」処理は、限界に来ていると思われる。
 狭い国土なのだから、養鶏業と農業を連動させない限り、「ふん」処理は上手くいかないのである。

 デンマークの「ふん」処理を見れば、養鶏業と農業の連動の仕組みが如何に重要か、すぐにわかる。
 この国では、法律で、ふん尿散布量を規制しているのだ。農地面積によって飼育頭数を定め、窒素による水圏汚染を防いでいる。さらに、アンモニアの揮散防止とリンの過剰施肥を防ぐため、ふん尿の固液分離を推進している。飼育頭数インセンティブ施策が採用されているのだ。(3)

 おそらく、日本では、このような施策が導入されることはあるまい。
 その結果どうなるか。・・・とても、語る気になれない。

 --- 参照 ---
(1) http://www.keimei.ne.jp/stat/birdnumber.html
(2) 成鶏「ふん」量は1.4トン/1日1万羽、雛鶏は0.6トンといった所だ。雛鶏数は成鶏の2〜3割程度だろう。
(3) http://group.lin.go.jp/leio/tkj/tkj22/kaigai22.html


 環境問題の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2004 RandDManagement.com