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2004.4.22 |
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貧乏籤を引いた竹林…竹林造成を推奨する人がいる。その理由は以下の5点だそうだ。(1)(1) 成長速度が速く、維持管理も容易で、成竹の利用の回転が速い。 (2) 有用な製品を供給する。 (3) 学習教材を提供する。 (4) 地球温暖化防止、災害防止に極めて有効である。 (5) 平地化への工事が簡単である。 その一方で、竹林の拡大は問題だという意見を良く耳にする。造林地や里山にモウソウ竹が侵入し、拡大を続けているからだ。 そして、多くの人が竹林が荒れたことが、この問題の本質だ、と語る。 ・・・なんとなく、しっくりこない話である。 確かに、多くの地区で手入れされていない竹林が広がっている。 新幹線沿線は軒並み竹林だ、という話しを聞いたことさえある。 もちろん、竹林維持ができない状況なら、竹は地下茎で増えていくから、竹林を領域内に抑えておくのは無理だろう。 侵食は土質に左右されることもないし、障害物で進行が止まることもないと言われる。凄まじい繁殖力であるから、地下茎侵入は防ぎようはない。 そして、一旦、侵入先で成長に成功すれば、周囲の背の低い木や、幼木を駆逐することができる。結果的に、竹が覆うことになる。 ここだけ見れば、竹は脅威に映る。 実際、静岡県全体で見ると、1988年と2000年を比較すると、竹林面積は約1.3倍になったという。(2) しかし、こうなるのははいたしかたない。竹林業が不調だからだ。 実際、竹材生産量は落ちる一方である。 1990年代には1970年頃の3分の1レベルに生産量が落ち、以後減少一途らしい。最近の統計を見ても、この傾向は続いている。(3) 土壁がなくなったから、建築用竹材市場は極めて小さくなってしまったし、民具や工芸品の用途も減る一方だ。筍も価格の安い中国産の浸透でさっぱりだ。 消臭剤や竹酢液など新たな利用方法で、一時、息をふきかえしそうに見えたが、当然ながら、安価品が輸入されたから、元の木阿弥である。 その上、生産者も高齢化しているから、再生の目処は立たない。 従って、竹林荒廃は避けられないのである。 これをなんとかせよ、というのは無理だろう。 そもそも、竹林が荒れているから、全体の環境が悪化する、とも言えまい。放置すれば、当座は林は荒れるが、長期的に見れば、自然淘汰が進み新たな植物相に変わるだけのことかもしれないからだ。 もちろん、ミクロで見れば竹林は増えているが、森林全体における竹林のシェアが急速に増えており、大きく環境が変わり始めている程ではあるまい。 それに、竹林の事業が成立しないのなら、竹林全体は減って行く筈だ。 それほど大きな問題とも思えないのである。 ただ、荒れた竹林が目立つ上に、部分的に見れば竹林が増えているから、注目を浴びていると言えよう。 しかも、モウソウ竹が、虎の子とも言える貴重な緑の、造林地や里山を侵食する。このため、荒廃竹林が憎悪の対象になるのである。 この気持ちはわからないでもないが、造林地や里山への侵食の原因を竹林荒廃とするのは、どうかと思う。 造林地や里山の管理に余り人手が割けないから、竹が入り込んだだけとも言えるからだ。 竹の地下茎は間違いなく周囲の土地に入ってくる。しかし、普通は、でてきた筍を取り、竹が育っても早めに切っていれば、林は守れる。 要するに、造林地や里山の方も、満足な管理ができない状態だから、侵食されるのである。 竹林も荒れているが、造林地や里山も荒れる寸前なのだ。五十歩百歩である。 自ら管理できなくなったため、先に滅びた方に原因を転嫁して、問題を覆い隠している訳だ。 --- 参照 --- (1) http://web.kyoto-inet.or.jp/people/j-bamboo/joho-h15.html 竹林造成推奨----NPO アクティブエイジング 野村順一氏 竹林拡大問題視--大阪大学大学院工学研究科 小泉圭吾氏 (2) http://www.pref.shizuoka.jp/governor/talk/env2/env21_3.htm (3) 竹材 http://www.hakusyo.maff.go.jp/books_b/WR01H140/html/r1060130.htm 環境問題の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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