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2005.1.20
 
 


国際的水産資源保護への道…

 2004年12月17日、ブッシュ大統領は閣僚級のCommittee on Oceans Policy(Council on Environmental QualityのJames L. Connaughton議長が委員長)を設置することを決めた。以後、この委員会で、資源管理のやり方、汚染規制の進め方、絶滅危惧の状況把握方法、といった基本的方向付けが行われることになる。(1)
 政策の特徴は、“science-based ecosystem management”にあるようだ。

 経済優先で、環境問題を軽視してきたブッシュ政権だから、たいして期待はできないと考える人も多いようだが、少なくとも、Oceans Policyについては、政府が優先課題に設定したのである。実際の効果は別として、大きな動きに繋がる可能性は高い。
 米国が動けば、それに合わせて世界も動かざるを得なくなるからだ。

 従って、ブッシュ政権の、この動きをどのように活用するかで、世界の海洋資源保護のレベルが決まると思う。

 少なくとも、米国は、自国管理下の海洋の資源保護を積極的に進めることは間違いあるまい。とはいえ、資源保護の基金を議会が承認するとは思えないから、おそらく様々な規制が始まることになろう。先ずは、その根拠を決めるための「科学的資源量予測」が作られる筈だ。議論を呼びそうな、やっかいな問題である。

 もともと、海洋水産資源とは野生種に他ならない。移動するから資源の国境管理はできかねるし、国毎に政治状況は違うから全体での漁獲コントロールも難しい。漁獲量にしても、調査には膨大なコストがかかる上、その精度は悪い。当てにならない予測で、施策が策定されているのが実情だろう。

 打ち手にしても、今のところ、抜本的な解決策は無い。(2)
 漁獲量激減に対応するため漁区閉鎖策を導入したところで、水産業は消える訳ではないから、当該規制区画外の漁獲量が激増するだけのことだ。各国の水産業自体が、効率化の道を歩んでおり、低コストで大量漁獲可能な技術が続々登用されている。生半可な対応では、資源保護など不可能に近い。
 といって、野生種捕獲から養殖にウエイトを移したところで、密集飼になるだけで、海洋汚染は避けられない。
 グローバルで見れば、大洋ほど豊かな生産量を、養殖で実現できる可能性は低い。

 この問題解決には、米国大統領のリーダーシップが不可欠なのは明らかである。しかし、ブッシュ政権1期目は、ほとんど手がつけられていない。ところが、2期目になって、重い腰をあげたようだ。

 そもそも、理屈からいって、公正な競争をせず、天然資源を収奪することで利益を上げる業態を認め続ける訳にはいくまい。
 とはいえ、海洋産業振興と環境保護を同時に推進する方策が、この政権の方向だ。そうなると、漁獲量枠売買市場創設のような、新しい枠組みを創設し、資本主義下での産業育成を進めるのが筋ではなかろうか。

 従って、米国大統領が、意識してこの方向に動けば、世界の流れは変わるかもしれない。
 (もっとも、水産業の利権を擁護し続ける可能性もあるのだが。)

 このチャンスを生かすには、米国を巻き込んだ、海洋産業の「仕組み」に関する議論を活発化させる必要があろう。
 (米国無しの、グローバル環境規制の議論を続けても空しすぎる。)

 水産資源に関する今までの議論は、個別の保護プログラムを対象としてきた。この場合、個別プログラムの議論になるから、地域や産業が抱える死活問題が必ず浮かびあがってくる。対立は深刻化しがちだ。
 そのため、空虚なイデオロギー論争を延々と続けるか、曖昧な金銭的妥協による解決の模索の、2者択一を迫られる。どちらを選ぶにしても、不毛な結果で終わりかねない。

 大きな枠組みとルールを決めて、その範囲内で当事者が自ら解を探れる仕組みを作らない限り、この状況は変わるまい。

 --- 参照 ---
(1) http://www.whitehouse.gov/news/releases/2004/12/20041217-5.html 12.18.2004:Washington Post
(2) Fiona Harvey 「Fish have fallen prey to our greed」Finantial Times 2004年12月27日(ウエブ記事は有料)


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