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2007.1.9 + 追記(2007.12.28)
 
 


汚染が進む揚子江…

 2006年12月14日、“白鰭豚可能已成為被人類滅絶的首種鯨類”(1)とのニュースが流れた。“白鰭豚”(2)とはヨウスコウカワイルカのこと。6週間もかけて、結局、一頭も発見できなかったのだから、もう如何ともし難い。(3)

 ヨウスコウカワイルカを救うための努力が足りなかったという訳ではない。“水中熊猫”ということで、保護区や人工飼育場も作られた。(4)
 しかし、“2002年7月14日、世界上唯一人工飼養的白鰭豚『淇淇』在武漢去世。”(1)
 これ以上のことをしたからと言って、事態が変わっていたということでもなかろう。

 それに、中国の人達が、ヨウスコウカワイルカ保護に冷淡だった訳でもなさそうだ。
 「聊斎志異」(5)の“白秋練”でヨウスコウカワイルカと人の恋の奇談がある位であり、愛され続けてきた動物だと思われる。
 手の打ちようがなかったのである。誰もが、絶滅必至と見ていた。(6)

 ただ、その時期が予想より余りに早かったとは言えそうだ。

 揚子江汚染は思った以上に深刻ということ。おそらく、河口近辺の海の砂漠化も時間の問題だろう。
 その深刻度は、2006年11月に出た数字が物語る。長江(揚子江)排出汚水量は、1998年の113億9,000万トンから、2005年には184億2,000万トンに増加したそうだ。飲用水水源国家基準に合う地表水などほとんど無い状況。(7)
 “河”もひどいが、それよりはましと言われてきた“江”もたいしてかわらない。
 “俟河之清、人壽幾何”(8)という事。このまま進めば、東アジアの生活は破綻しかねないのだが。
  → 「黄河新文明隆盛の波紋 」 (2006年6月14日)

 揚子江は、中国の「水」の元ともいえる。上流には重慶、下流には上海があり、武漢、南京もかかえ、中国経済の3分の1を支えている。なんとかしなければ、大変なことになる。

 と言っても、汚染なき産業発展・都市化などあり得ないが、中国の場合、厄介なのは、もともと耕地が少ない点だ。お蔭で、過度の開墾と灌漑農業化は避けられず、水資源不足の解消は望み薄。食糧生産は需要に応えられないし、競争力に低いから、肥料・農薬の過剰投入は常態化している。生活レベル向上に伴い、畜産業も伸びているから、糞尿汚染もひどくなる一方。
 そして、経済発展に伴い、鉱山、工場、家庭からの大量の廃棄物が生まれる。これが河川に流入してくる。もともと、政策上、重工業の内陸立地を進めてきたから、どうにもならない。

 もちろん、こんなことは、中国政府も前々から気付いてはいる。それなりの対処策も打たれてはいる。しかし、地方政府は経済優先。静脈産業も無きに等しい。これで奏功する訳がない。
 それでも、ようやく、循環経済法を準備する状況にまでこぎつけたようだが、こんなスピードではとても間に合うまい。

 汚染水を飲むことで、次に絶滅するのは、間違いなくヨウスコウジュウミンではないかと思うが。

 --- 参照 ---
(1) http://big5.xinhuanet.com/gate/big5/news.xinhuanet.com/tech/2006-12/14/content_5486188.htm
(2) http://museum.ihb.ac.cn/p1/p1-d.htm6
(3) Jerry Guo: “River Dolphins Down for the Count, and Perhaps Out” Science [2006.12.22]
  http://www.sciencemag.org/cgi/content/summary/314/5807/1860
(4) http://www.baiji.org/expeditions/1.html
(5) http://www.dragonsource.com/be-books/xiaoshuo/liaozhai/lz418.html
(6) http://zh.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E9%B3%8D%E8%B1%9A
(7) http://www.envir.gov.cn/info/2006/11/112758.htm
(8) 黄河が清むのを待っていたら, 人の命は幾らあっても足りぬ.
  [「春秋左伝」襄公八年冬] http://chinese.dsturgeon.net/text.pl?node=19232&if=gb
(地図) http://www.abysse.co.jp/world/index.html

 --- 追記 ---
結局のところ, ヨウスコウカワイルカは絶滅.
1500年以来4番目の絶滅哺乳類だが, ヒトの活動が原因となったのは初.
Samuel T. Turvey, et.al.: “First human-caused extinction of a cetacean species? ”
Biology Letters [3007.10.22] http://journals.royalsociety.org/content/15782wq480207749


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