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2007.2.15 |
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ICPP報告書で世界は変わるか…2007年1月、国連の「気候変動に関する政府間パネル(ICPP(1))」第4次報告書案がリリースされた。膨大なデータ量のReAnalysis結果を踏まえたシュミレーションの集大成だ。 (気象庁の全球データベースは, 26年間分で, 13テラバイトに達した.(2)) 2,500名以上の科学者がレビュワー役を務め、主著者は450名だそうである。ただならない体制で注力したことがわかる。 マスコミがしばらくとりあげていたが、下火になったようだ。 票になりそうにもないから、政党の意見表明も少ない。(3) モデルを用いた長期予測だから、どこまで当たるかはなんとも言い難いが、現在の世界の気象状況を過去のデータと整合するように調整することで、気候トレンドがはっきりと見えるようになった。 このトレンドを眺めると、一番最初に大問題になりそうなのは、旱魃のようだ。 低降水量地域は、アフリカ北部、中東、オーストラリア、中国内陸部、カリフォルニア、チリといったところ。 京都議定書の目標達成ができないことは歴然としているから、早晩、ここら辺の生活基盤が揺らぐことになろう。 特に大変なのはアフリカだ。対処するための資金が無いし、人の移動も難しい。残念ながら、飢餓から救うのは無理そうだ。 環境規制に消極的な、米国、オーストラリア、中国も大きな影響を受けることになりそうだが、これらの国々の姿勢が大きく変わることもないだろう。その時になって、対処療法でなんとかするということ。 個別に見ておこう。 米国だが、Bush政権は、エネルギー産業と一心同体。従って、環境規制は、温暖化防止というより、安全保障の視点での政策にすぎない。科学者の予測を、経済学の予測と同じようなものと見ているから、温暖化対応は期待できない。 カリフォルニアは農業不適地域になるということだ。 次の、オーストラリアだが、鉱産物・エネルギーの輸出額は、農産物の4倍もある。環境規制で輸出が滞ることを恐れる国だ。京都議定書の批准をしないと言うより、そんな協定を壊したいのが本音だろう。(4) だが、オーストラリアでは、すでに5年連続の旱魃。今年は特に凄まじいらしく、農家所得は45%減。(5) もともと、オーストラリアの土壌は栄養分が乏しく、塩化が進行しており、生産力は極めて低い。畜産の過放牧も植生を変えてしまい、土地の劣化が進んでいる。これに旱魃が加わるのだから、早晩、農業は成り立たなくなるだろう。 中国の水問題も間違いなく深刻化する。 2007年冬の北京は異常気象に見舞われており、思ったより早く問題化すると見る人も多そうだ。 (2月5日, 北京の最高気温が16℃に達したという. 1840年以来の記録的な暖かさだそうである.(6)) この暖冬の背景には、“全球変暖”があると言われているからだ。(7) 温暖化対策が必要なのは、皆わかっていると思う。 しかし、中国はマクロで見れば発展途上国。経済成長が停滞すれば、政治体制が崩れかねまい。従って、石炭や建築資材の生産を抑えることは至難の業である。 こんな状態を見ていると、危機を感じる人は多いかも知れない。対応の余りの鈍さに歯がゆく思う人も少なくない筈だ。 しかし、危機を煽るべきではない。そんなことをすれば、解決から益々遠ざかることになる。 危機感は教えて伝わるものではないからだ。 最悪は、過激な行動で訴ったえる戦術。もともと問題意識が無い人には馬の耳に念仏。せいぜいが、政争に利用されるだけ。 そんなことをする位なら、温暖化が進み、荒っぽい気象になり、乾燥地帯が広がってきた時、どうやって我々の生活を守るかを考える方がましである。 人々の考え方を変えない限り、世界は変わらない。報告書とは、それがどんな内容であれ、考え方を変えるものではない。 核兵器廃絶ができないのと同じようなものである。 --- 参照 --- (1) http://www.ipcc.ch/ (2) http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/monitor/2005/topics3.html (3) http://www.komei.or.jp/news/daily/2007/0205_01.html (4) Howard首相は原子力へと進むつもりのようだ. http://abc.net.au/news/newsitems/200702/s1839613.htm (5) http://abc.net.au/news/australia/nsw/midnorth/200610/s1760222.htm (6) http://www.beijingdaily.com.cn/ztxw/200702/t20070206_166694.htm (7) http://www.beijingdaily.com.cn/ztxw/200702/t20070206_166697.htm 環境問題の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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