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2010.8.10
 
 


海洋生物多様性研究PJについて…

 Public Library of Science発行の雑誌に、日本近海の海洋生物種の多様性は群を抜いているといった論文が掲載されたとの報道を見かけたので、興味を覚え雑誌の目次を眺めてみた。
 リストを見て正直驚いた。“Census of Marine Life (2000〜2010) ”プロジェクトが進んでいるとの話は聞いてはいたが、これほどの規模だとは思わなかった。
  → [intereview with Jesse Ausubel, a Program Director of the CoML]
     Beth Lebwohl: “Jesse Ausubel on the Census of Marine Life, a count of all ocean life”

        [July 19th, 2010] (C) EarthSky Communications


 2010年8月2日付論文のタイトルは以下の通り。
Biodiversity's Big Wet Secret:
   The Global Distribution of Marine Biological Records Reveals Chronic Under-Exploration of the Deep Pelagic Ocean
Marine Biodiversity of Aotearoa New Zealand
Antarctic Marine Biodiversity ? What Do We Know About the Distribution of Life in the Southern Ocean?
Marine Biodiversity in the Australian Region
Deep-Sea Biodiversity in the Mediterranean Sea: The Known, the Unknown, and the Unknowable
Marine Biodiversity in Japanese Waters
The Biodiversity of the Mediterranean Sea: Estimates, Patterns, and Threats
Marine Biodiversity and Biogeography ? Regional Comparisons of Global Issues, an Introduction
An Overview of Marine Biodiversity in United States Waters
Marine Biodiversity in the Caribbean: Regional Estimates and Distribution Patterns
Marine Biodiversity in South Africa: An Evaluation of Current States of Knowledge
A Census of Marine Biodiversity Knowledge, Resources, and Future Challenges
“Journal PLoSone - Marine and Aquatic Sciences Articles” (creditは各author)

 どうも、探せばまだまだ新種は存在するらしいし、まさに現代の博物学の総集編。小生はこの手のオープンプロジェクト型の研究には期待している。情報が広く公開されるので、これがヒントになって、新しいものの見方というか、“気付き”が生まれるのではと見ているからだ。もちろん、当該分野外でという意味だが。

 それはさておき、気になったのは、日本近海の海洋生物種の多様性のレベル。上記リストの最後尾論文のTable-1を見たが、小生には日本が頭抜けているとは見えなかった。確かに、絶対値で見れば、オーストラリアの32,889種と日本の32,727種は、それに次ぐ中国の22365や地中海の16,848種と比べればとてつもなく多いことは事実。
 しかし、それは海洋面積が広いから。面積当たりの密度からいえば、たいしたことはない。日本は、カナダ西岸と同密度であり、カリフォルニア沿岸より低い。原油流出のメキシコ湾以下である。

 極寒地や熱帯で種が少ないのは自明だが、こうした日本の状況はどう考えるべきなのだろうか。
 見れば、密度で圧倒的に高いのは、韓国と中国だ。それぞれ、日本の3.9倍、3.2倍もある。もともとは日本もそのレベルだったということではないのか。もしそうなら、日本は種の激減真っ最中ということでは。
 地形や深さも関係するから、素人判断は間違っていると見た方がよさそうだが、大いに気になるところだ。

 そう思ってしまうのは、実は理由がある。
 世界的に種が豊富なのはエビ、カニ、イカ、タコ、貝といった甲殻類と軟体動物だからだ。これらが、全体の4割近くを占めているそうだ。
 振り返ってみれば、日本では、栄養分が流れ込みそうな海岸はほとんど護岸工事済。いかにも、貝の種類が激減していそうだ。海老・蟹などは大好物の国民であり、乱獲を続けてきたのも明らか。その影響は相当大きなものではないのか。
 まあ、多少は対策も打たれてはいるが、マクロで見れば、今からでは手の打ちようは無いと言ってよいのでは。素人のお勧めとしては、見世物無しの、専属海域を持った水族館の設立だが、漁業従事者の猛反対が予想されるし、寄付金も集まらないだろうから難しいか。

 --- 参照 ---
[intereview with Jesse Ausubel] “Eye To Eye: Jesse Ausubel” CBS [May 9, 2007]
   http://www.cbsnews.com/video/watch/?id=2782697n


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