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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.2.20 ■■■

魚 (補遺)

魚について追加されている分(續集 卷八)を眺めてみた。

中華とは基本的に大陸の帝国。王朝料理には力を入れる体質だから、食材としての魚にも興味はあるに違いなかろうが、なんといっても、美味いと感じるのは羊というのが中原の食文化。羊+大=美の世界なのだから。
 向北有濮固羊,大而美

と言っても、獣肉の種類云々よりは、淡水魚でこれぞという食材を見つけることの方が楽しかろう。魚に興味があるというようりは、どんな味かに関心がある訳で。

その結果、これはなかなかイケルとなったものはこんなところ。・・・
【朱砂鯉@赤沙湖
  帶微紅,味極美。
【負朱魚】
  絶美,毎鱗一點朱。
【丙穴魚】
  食乳水,食之甚温。
魚】(フナ[鮒])
 東南海中有祖州,魚出焉,
 長八尺,食之宜暑而避風。
 此魚状,即與江河小魚相類耳。
 潯陽有青林湖,魚大者二尺余,
 小者滿尺,食之肥美,亦可止寒熱也。

長八尺モノはオーバーだが、暑寒時の滋養食最適は、そうかも。江湖や青林湖産が美味いのだという。泥臭さが無いのかも。小鮒も肥えてれば美味い。ソリャ当然だろう。
魚=魚】(タウナギ/田鰻)
  大可尺圍,烹而食之,發白復K,齒落更生,自此輕健。

毒魚ももちろん食材である。
魚】(フグ[河豚])
  肝與子倶毒。食此魚必食艾,艾能已其毒。
 江淮人食此魚,必和艾。

肝は毒。蓬(艾葉)と一緒に食べる要有り。江淮辺りではそうして食す。
クロロフィルにそんな効能はありえないから、食物繊維の吸着能力期待だろうか。

不思議なのは、鰉魚(or 象魚)が登場しないこと。もちろんチョウザメ。

【黄魚】(アカエイ[赤])
 色黄無鱗,頭尖,身似大槲葉。口在頷下,眼後有耳,竅通於腦。
 尾長一尺,末三刺甚毒。

食べないのかナ。

鱠】(n.a.)
 傍海大魚,脊上有石十二時,
 一名籬頭溺,一名鱠。其溺甚毒。

渤海辺りの大魚の名前にしては解せぬ。は蟹。(南海毒蟲南海有毒蟲者,若大蜥蜴,眸子尤精朗,土人呼為十二時蟲。一日一夜,隨十二時變其色,乍赤乍黄。亦呼為籬頭蟲。@太平廣記)そのナマスなど猛毒だし。海に捨てたら、大魚になったのかいナ。

【"劍魚" "琵琶魚" "虎魚"】
 劍魚,海魚千為劍魚。
 一名琵琶魚,形似琵琶而喜鳴,因以為名。
 虎魚,老則為蛟。江中小魚化為蝗而食五谷者,百為鼠。

上記は3種類とも実在の魚である。

といっても、"剣魚/Swordfish"は日本語である。もちろん、「かじき[梶木 or 」のこと。中国語では旗魚。馴染むのは「たちうお/太刀魚」の方。中国語では白帯魚(or )。
さすれば、汽水域に棲む「刀」かも知れない。和名は「えつ(斉魚)」で有明海に沢山棲んでいた。
もっともこんな風に考えるのは、「だつ[駄津]」を知らない人だけ。といっても、この用語はサンマ型魚の一般名称で珍しい名前ではない。ただ、南島の漁師にとっては殺人魚とされる。中国では鰐形圓針魚 or 鰐形叉尾鶴と称されているようだが、南島の発想なら巨大ドリル魚となろう。夜間、ライトに向けて猛突進してくるため、ウエットスーツなど軽く突き抜けて深く刺さるほどの威力がある。当然、そこから抜けないから暴れることになる。即殺して刺さったままで病院に行かないと出血多量で致死間違いなし。ただ、それで助かるかはわからぬ。突き刺さった場所によっては、お陀仏は免れないのだ。

琵琶魚は「あんこう[鮟鱇]」。体の格好からの命名だ。しかし、音を出すことはない。
一方、浮袋で音を出す魚はよく知られている。
黄海に棲息するのは、首魚の仲間である「箕作黄姑魚」。略称なら「黄魚」。
群れで音を出すことがあり、岸からでも聞こえるとなにかで読んだ覚えがある。記憶が定かでないが。
和名はニベ[]。釣りあげた人がその音を耳にしている程度。関東では「しろぐち[白愚痴]」あるいは「いちもち[石持/]」と呼ばれている。関西は言うまでもなく単なる愚痴である。

虎魚は日本では「おこぜ[]」。中国語では鬼(or 石狗公)だが、虎魚とも。「ひめおこぜ」は虎
尚、龍の分類上、蛟とは鱗類の祖という意味。
  分鱗生蛟龍,・・・分→介
  蛟龍生鯤
  鯤生建邪,
  建邪生庶魚。

魚類ではないが。泳ぐので、・・・。
イカはすでに取り上げているが、どうして気になるのかわからぬが、その骨の用途について。楊枝を使ったことはあるが。
【烏賊魚骨】
 可以刻為戲物。
刻むと玩具になるという。・・・どんな遊びなのか。
【章舉】(タコ[蛸])
 毎月三八則多。
3日、8日によく獲れる?餌木ing釣りだと余りに獲れ過ぎるので、漁の日でも決めたのかネ。・・・発音はわからぬが、語呂合わせではないようだ。日本では蛸の日が制定されているが、その手のものだろうか。

以上。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎 5」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.
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