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☀ 📖■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.3.4 ■■■
文字遊び
楊脩[175-219]は、後漢書によれば、修字德祖，好學，有俊才，為{魏]丞相曹操主簿，用事曹氏。文字遊びの第一人者と見られていたようで、劉義慶:「世説新語捷悟篇第十一」にその析字能力を伝える話が３件掲載されている。
＜闊＞
楊德祖為魏武主簿，時作相國門，始搆榱桷，魏武自出看，使人題門，作「活」字，便去。楊見，即令壞之。既竟，曰：「門中『活』，『闊』字。王正嫌門大也。」
相國門を建造中のこと。
曹操が視察後、「活」の一字を書いて去った。
皆意味わからず。
楊脩指摘。
門+活＝「闊」("広い"の意味)
丞相はこの門が広すぎてお嫌いと。
＜一合酥＞
人餉魏武一桮酪，魏武噉少許，蓋頭上題「合」字以示衆。衆莫能解。次至楊脩，脩便噉，曰：「公教人噉一口也，復何疑？」
酥の貢物あり。
曹操は容器の蓋に「合」と書いて立ち去る。
周りの者ども理解できず。
楊脩対応。
全員一口づつ食べたが、それで何か問題？、と。
一合酥＝一人一口酥
＜曹娥碑＞
魏武嘗過曹娥碑下，楊脩從，碑背上見題作「黄絹幼婦，外孫齏臼」八字。魏武謂脩曰：「解不？」答曰：「解。」魏武曰：「卿未可言，待我思之。」行三十里，魏武乃曰：「吾已得。」令脩別記所知。脩曰：「黄絹，色絲也，於字為絶。幼婦，少女也，於字為妙。外孫，女子也，於字為好。齏臼，受辛也，於字為辭。所謂『絶妙好辭』也。」魏武亦記之，與脩同，乃嘆曰：「我才不及卿，乃覺三十里。」
"曹娥碑"には８文字の題字があった。
「黄絹幼婦，外孫齏臼」
曹操が解るか？と尋ねると、楊脩は、もちろん、と。
しばらく考えさせろということで、
３０里行って曹操ようやくわかる。そこで答えさせた。
「絶妙好辞」
黄絹＝色絲→絶
幼婦＝少女→妙
外孫＝女子→好
齏臼＝受辛→辞
尚、曹娥碑とは、孝行娘の事績を記念して造立されたもの。
曹操の知恵は抜きんでているが、楊脩より３０里遅れるというお話である。
楊脩の文字に関する知恵という点では、これよりは、以下の話が有名である。
＜鷄肋＞
及操自平漢中，欲因討劉備而不得進，欲守之又難為功，護軍不知進止何依。操於是出教，唯曰「雞肋」而已。外曹莫能曉，修獨曰：「夫雞肋，食之則無所得，□之則如可惜，公歸計決矣。」 [後漢書巻五十四 楊震列傳]
(兵站網がしっかりしている蜀[劉備+諸葛亮]との戦いが上首尾とはならず膠着状態。)
曹操は、「雞肋」とだけ言う。
つまり、丞相は、鷄肋同様に、この地はつまらぬものだが、捨てるとなれば多少は惜しい気もする。マ、その程度でしかないとの発言と解釈したのである。
これで軍が撤退し始めたため、楊脩は処刑の憂き目。そんなことがあって、三国志のハイライトとされており、有名なのである。
鷄肋は析字話ではないが、おそらく当時は文字に関する話は五万とあったろう。
そう思うのは、「世説新語簡傲第二十四」に、竹林の七賢の指導的存在である嵇康[224-262]の「鳳＝凡+鳥」話が掲載されているから。
＜鳳＞
嵇康與呂安善，毎一相思，千里命駕。安後來，値康不在，喜出戸延之，不入。題門上作「鳳」字而去。喜不覺，猶以為欣，故作「鳳」字，凡鳥也。
親友である呂安が訪ねて来たのだが、生憎と不在。嵇喜が家に招き入れようとするが応ぜず、門の上に「鳳」の文字を書いて去る。嵇喜は、不覚にも、目出度いと勘違い。
その意味、凡島に用無しだったのである。
日本では、嵯峨天皇[786-842]が案出し小野篁が解いた有名な言葉遊びがある。
「子子子子子子子子子子子子＝猫の子子猫、獅子の子子獅子」
言うまでもなく、これは座興。
ところが、こともあろうに、魏では、丞相が、戦争の真っ最中に言葉遊び。常識的見方からすれば、才に溺れた、丞相の器ではない人物と言えよう。もっとも、乱世の世は傑出した人物でなければ統治できぬから、そんなことは些細なことかも。
さて、成式だが、文字遊びにも触れない訳にはいくまい。
しかし、特段の引用は無いようだから、座興や皮肉に用いるのはお好みではなかったのでは。
それに、遊び半分のこんな例ありという指摘もあるし。・・・
＜火事＞
翟天師名乾祐，峽中人。
長六尺。手大尺餘，毎揖人，手過胸前。臥常虚枕。
晩年往往言將來事。
常入夔州市，大言曰：
「今夕當有八人過此，可善待之。」
人不之悟。
其夜火焚數百家，八人乃火字也。
[巻二 壺史]
峡中の人、乾祐は翟天師と呼ばれる道士。
常人より大柄でとてつもなく大きな手をしていた。
枕無しで寝たとも。
晩年になって予言をするようになった。
四川のとある州に入った時にも、大仰な予言を。
「今夕八人が通る。善き待遇を。」
なんだか、さっぱりわからず。
夜になって火事発生。數百家屋が燃える。
なるほど、八人とは火という文字を指していた訳か。
しかし、「火＝八+人」である訳がなく、完全な文字遊び。
甲骨や金文では、炎が立つ様子の象形文字。灬など、いかにも火がついた薪そのものであり、燃え上がれば𡿦の様になるが、高く炎が上がるなら「火」の形状はあたっている。
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