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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.6.17 ■■■

【詭習】奇術

「卷五 詭習」4つ目だが、6つのうち、これだけは異質。
懐に瓦の欠片をしまうと、それが亀に変わるというだけの、他愛もないお話だからだ。要するに、トリックなのである。見世物【奇術】に過ぎない。

ただ、登場人物の年代にずれがある。その理由はわからないが、間違うことは考えにくく、なんらかのメッセージがあるのだろう。

元和[806-820年]中,
江淮
[長江〜淮河一帯]術士王瓊[454-527年]
嘗在段君秀
[579─638年][@河南洛陽]

テーブル上でのサロン的見世物芸だから、突然、懐から採り出されるのは亀だが、もしも大舞台で行なわれる芸なら、間違いなく鳩だろう。どちらの方が奇術として簡単なのかは知らないが。
ただ、亀を逃がすという設定が面白い。仏教徒的なイベントに仕上げてある訳だ。西の方角へ亀が歩いて行き、夜が明けると転生したのか見えなくなる。そして、庭に残っているのは、懐に入れた瓦の欠片。
もちろん、ショウだから、語りも、きっと愉快なものだったに違いない。その場で、瓦の破片に亀の絵を描くことで座を盛り上げていくことこそ芸人のなせる技。奇術そのものはどうということはない。

令坐客取一瓦子[碎瓦片]
晝作龜甲懷之一食頃取出乃一龜。
放於庭中循垣西行,經宿却成瓦子。


そして、終了時には、オマケの芸が。
蕾を密封容器に入れ渡されるだけ。その後、暫くすると、花が咲いているという仕掛け。
余韻がいつまでも残り、あのショウはヨカッタヨカッタと好評を博すから、色々なところからお声がかかること間違いなし。

又取花含默封於密器中一夕開花。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎 1」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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