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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.7.20 ■■■

赤木

赤木/秋楓/Javanese bishopwood(茄苳[カタン]とも呼ぶそうだ.)は、熱帯/亜熱帯地域に生える常緑の半落葉である高木(15〜25m)
東南アジアやポリネシアに多いと言われている。
成長が速い上に、石灰質のガレ場であっても、平然と生育するそうだから、優勢なのだろう。もちろん、湿度が高い環境なら、より元気。
もっとも、図鑑によれば、アレロパシー能力があるというから、それが効いて、独占的に繁茂するのかも。
新宿御苑では大混雑温室内での一本育ちなので、そんな雰囲気はさっぱり感じさせないが。

赤い木と呼ばれるが、樹皮がはがれやすく、赤褐色ということだけのこと。材も似た色と見る人もいるが、色の魅力で特段の用途があるとは思えない。首里城からほど近い(南西)内金城御嶽に自生している樹木が天然記念物指定[1972年]を受けているので、名前が知られているといった状況だろう。

そこは、琉球王朝の信仰対象の聖域だったのである。
尤も、観光案内では、月桃の葉に包んで蒸した鬼餅/ウニムーチーを食べて厄払いする習慣が始まった地とか。ともあれ、赤木は南島特有であり、聖樹だそうな。

そんなことを知ると、成式の短い一文が結構意味ありげにに思えて来たりするもの。・・・

赤木。
宗廟地中生赤木,人君禮名得其宜也。

[卷十 物異]

と言うのは、何故に赤木なのか気になるから。

松か柏でよさそうなものではないか。
ただ、問題は、松柏を植える目的が、人民を戦慄させるためだったという点。私社を禁止し、宗廟社稷の天子-官僚による一括的統率を実現するためには、植樹も重要なファクターだったらしい。

哀公[魯の国王]問社於宰我[孔子門人]
宰我對曰。夏后氏以松。殷人以栢。周人以栗。
曰使民戰栗。
子聞之曰。成事不説。遂事不諫。既往不咎。

   [論語 八第三]

仏教が入って来たことで、そんな姿勢を改めるべく、樹種を変えたということだろうか。

とは言え、宗廟とは儒教の根幹をなす血族信仰の地。
そこには木製の位牌を安置する以上、宗廟に植える樹木にも永遠性と繁栄の象徴的意味が必要となろう。
おそらく、赤木は、位牌用材として望ましい特徴を持っていたのだろう。そして、排他的に育つことも要件の一つだったのかも知れぬ。

尚、琉球の鬼餅は12月8日の行事。ご存知のように、その日は仏教の重要な節、"成道会"。本来なら、それにちなんだ印度菩提樹が望ましかろう。しかし、それが無理ということで考えると、代替としては赤木しかなかったということか。

う〜む。
アイデア創出力不足で、残念ながら、今一歩の理屈しか思いつかぬ。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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