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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.7.31 ■■■

ホワイトタイガー

ホワイトタイガーは、ベンガル虎のアルビノではなく変種。
(華南虎/アモイ虎や東北虎/アムール虎にも白変種がいたらしい、前者は種そのものがほぼ絶滅。後者も危うい状態。従って、現辞典の白虎はインド虎のみ。)

珍しい変種であることは間違いないとはいえ、古代、生きたまま捕獲されたことがあったのは間違いなかろう。漢字もあることだし。
(""白虎也。@「説文解字」虎部 「虎+白」=「𧆽」は異体字。)

このことは、四神獣の一つである白虎は、想像上の動物と見る訳にはいかないことになろう。
そもそも、「禮記」禮運第九では、白虎は登場せず、麒麟なのである。
  麟、鳳、龜、龍,謂之四靈。---
  鳳皇、麒麟皆在郊,龜、龍在宮沼---


その麒麟を外したのが「史記」卷二十七天官書第五である。
インドでは、白虎は神の化身だから、西は白虎であるべしとなり、麒麟が排除されたのだろう。
  東宮蒼龍,房,心。---
  南宮朱鳥,權,衡。---
  西宮咸池,曰天五。---參為白虎。---
  北宮玄武,虚,危。---


成式はその辺りが気になっていたのではないか。
「卷十四 諾皋記上」で、極めてローカルな白虎伝説を取り上げているからだ。・・・

虎窟山[山東陰県東阿鎮の海抜250mの低山。],相傳燕建平[400-405年:十六国時]中,濟南[@山東]太守胡諮於此山窟得白虎,因名焉。

これは伝説というより、実話と違うか。
中国で、白虎が発見された最後ということかも知れぬ。

「白虎」は作り話的主人公だが、実在の動物でもあるのだゾと指摘したかったのだろう。

そう考えるのは、「白虎」とは確かに聖獣ではあるものの、現代のキャラクターに優るとも劣らない存在だったと思われるから。
東海の黄公譚がまさにソレなのだ。・・・

秦末,有白虎見于東海,黄公乃以赤刀往厭之。
術既不行,遂為虎所殺。
[葛洪:「西京雑記」卷三/六三術制蛇御虎]
秦代末に白虎が東海に出現。
(幻術巧者の)黄公、赤刀で厭[=呪術]に往くが、術を行使できず。
遂に、虎に殺戮される。


「術師 v.s. ホワイトタイガー」の戦いの話である。
現代でも通用しそうな題名ではないか。
「西京雑記」の記載は、ほんの数行。酔っぱらった老齢の術師が白虎にしてやられるお話だが、戯作内容にはピッタリ。
貴族達への歌舞音曲に用いられたのは間違いないだろう。

成式の時代は、小説=演劇が流行っていたのだから。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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