表紙
目次

📖
■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.8.10 ■■■

冢井気

陶宗儀[1329-1410年]:(南村)輟耕録」巻十一には、以下の文がある。「卷十一 廣知」からの引用。

《酉陽雜俎》有雲:
 「
凡冢井間氣,秋夏多殺人。
  先以毛投之,直下,無毒。
  迥舞而下者,不可犯。
  當以數鬥澆之,方可入矣。

凡そ、
冢井
[=墓や井戸]の間[←"閉"の書あり.つまり滞留の意味.]の気は
(恐ろしいもので、)
秋夏の季節には、多くの人がその気で殺されてしまう。
(そんな危険な所に入ろうというなら、)
先ずは、鶏毛を持ち出して、この中に投じてみよ。
直下したなら、毒は無しと判断してよし。
もしも、回舞して下るようなら、この場所を犯すべからず。
そうなったら、当に、
(解毒用に)
[=米のとぎ汁]数斗を用意して、
中に注ぎこんでから入るべし。


墓穴や井戸の中は、湿気が多く日光も差し込まず、空気の流通が無い閉鎖的な空間であることが多い。このため、夏になると、酸欠状態になっていることも少なくない。
それでも、硫黄系の臭いがすれば、その恐れに感づくから、空気が入れ替わってから中に入るのが普通。
ところが、無臭だと、なにげなく入ってしまったりするもの。その場合、死亡リスクが高いのは、メタン醗酵菌が活動している穴と言われている。軽いガスなので吹き上がるものの、その代わりに酸素が穴のなかに十分入るとは限らないからだ。
このような穴の場合、先ずは、メタン醗酵菌の活動を抑えることが肝要。米のとぎ汁には、乳酸菌が含まれているから、大量に撒けばその効果はでるということだろうか。

・・・無理にこのように解釈してみたが、昔の説がなんらかの合理的根拠があると見なして考えるのは、現代人の勝手なものの見方。当たる場合もあるが、外れるものも、というだけ。前者はとりあげるが、後者をとりあげる人はいない訳だから、たいした意味はない。面白話以上ではない。
しかしながら、小生を含め、昔の話には一理あると考えたくなる性向があるのは間違いない。そこらは肝に銘ずべしである。

と、言うか、非科学的な理屈をふりかざす御仁だらけなのは、今も昔もたいして変わらないということ。それが、我々が住む社会の現実。
例えば、子宮頸癌ワクチンが危険だから止めよというのは日本の自称科学者達だけ。それを、一貫して応援しているのが日本のマスコミである。驚くことに、ジャーナリストがWHOの批判に聴く耳もたずなのだ。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>>    トップ頁へ>>>
 (C) 2016 RandDManagement.com