表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.9.25 ■■■ 破虱録「酉陽雑俎」の全篇に目を通しただけでの推定にすぎぬが、成式は、白楽天と違って、官職に就いていることを誇りに思っていなかった可能性が高かろう。と言うか、こんな仕事をするのは恥ずかしいことだと感じていたかも。社会に大いに役に立っているとは考えていなかったように見えるからだが。 と言っても、下らない仕事だからとサボタージュを決め込んだり、ことあれば反抗的態度を示すことも無かったであろう。それどころか、職掌については、質が墜ちないように、常時、努力は怠りなしだったと見てよかろう。 糊口をしのぐためには不可欠と割り切っていたように見える。 そんな心情の一端を示すような記述がある。 段成式邸に於ける宴会の様子が語られているのである。 段家は料理でも有名であり、その家も大きなもの。 そこに妓女を読んで、大騒ぎして楽しもうではないかという試み。 話は、そこでの座興について。 自称小説としての「酉陽雑俎」の原点ともいうべき遊びである。 成式曾一夕堂中會,時妓女玉壺忌魚炙,見之色動。 因訪諸妓所惡者,有蓬山忌鼠,金子忌虱尤甚。 坐客乃兢徵虱拿鼠事,多至百余條。 予戲摭其事,作《破虱録》。 [卷十二 語資] : 嫌いなものがある妓女あり。 魅力的にもかかわらず、炙った魚を見るだけで気色悪しだとか。 それなら他にも、と尋ねてみると、なんと、鼠とか、虱だと言う妓女も。 一種の忌避現象にすぎぬが、ソリャ面白いということになり、一同、競って鼠談と虱談をし始めた。 その話は百にも上ったので、戯れに編纂することにした。 題して、「破虱録」。 この「破虱録」を読んでみたいものだが、残念ながら佚文。欠片も残存していないようだ。 後世の古典漢籍収集書では、「酉陽雑俎」に収録されていた筈とされるが、どうなのだろうか。 是書首有自序。云凡三十篇。爲二十卷。 今自忠志至肉攫部。凡二十九篇。尚闕其一。 考語資篇後有云。客徵鼠蝨事。余戲摭作破蝨録。今無所謂破蝨録者。蓋脱其一篇。 獨存其篇首引語。綴前篇之末耳。 至其續集六篇十卷。 [四庫全書総目提要 子部五十二 小説家類三@1782年] 忠志〜肉攫部まで、29篇で、自序では30篇だから、「破虱録」が欠落しているとされている。 しかしながら、伝わっている20巻には30篇が揃っている。 「前集」:[1,2,3]忠志/禮異/天咫,[4,5]玉格/壺史,[6]貝編,[7,8,9,10]境異/喜兆/禍兆/物革,[11,12]詭習/怪術,[13,14,15]藝絶/器奇/樂,[16,17]酒食/醫 [18,19,20]黥/雷/夢,[21,22]事感/盜侠,[23]物異,[24]廣知,[25]語資,[26,27]冥跡/屍穸,[28]諾皋記(上/下),[29]廣動植(一/二/三/四),[30]肉攫部 ちなみに、続集10巻は以下の通り。 「前集」:集」:[1]支諾皋(上/中/下),[2]貶誤,[3]寺塔記(上/下),[4]金剛經鳩異,[5]支動,[6]支植(上/下) 小生は、もともと収録されていなかったと見る。 どうせ、書籍丸暗記の官僚だらけの世を揶揄するものだらけ。参加者が面白いだけだから、限定出版では。 ただ、そこから漏れ伝わり、伝承古代笑い話として後代の書に取り上げられている話はあろう。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2016 RandDManagement.com |