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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.10.7 ■■■

厭鼠法

鼠を防ぐ呪術の内容が「卷五」に記載されている。
「怪術」の扱いである。・・・

厭鼠法:
七日,以鼠九枚置籠中,埋於地。
秤九百斤土覆坎,深各二尺五寸,築之令堅固。
《雜五行書》曰:
 “亭部地上土塗竈,水火盜賊不經;
  塗屋四角,鼠不食蠶
[=蚕]
  塗倉,鼠不食谷
[=穀]
  以塞
[=陷],百鼠種絶。”
"厭鼠法"は7日に行う。
鼠9匹を籠の中に入れて、土中に埋める。
きっちり軽量した900斤の土をその穴に被せる。
穴は深さ2尺5寸とし、指示通りにしっかりと築く。
(まさにナンダカネの「怪術」と言えよう。
 まともな方法もあると言うのに。)

「雑五行書」
[佚書]では以下の通り。
 楼の地上部の竈は土で塗り込めるべし。
  そうすれば、水難、火事、盗賊に会わないですむ。
 家屋は四角にして塗り壁にすべし。
  そうすれば、鼠に蚕を食べられることはなくなる。
 倉も塗り込めるべし。
  そうすれば、鼠に穀類を食べられることはなくなる。
 穴は塞いでしまうべし。
  そうすれば、ほとんどの種類の鼠は絶滅する。


9匹で900斤だから、90穴に設定しているかも。三方陣の桝の数"9"へのこだわり以上でなければ、それ以下でもなかろう。
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尚、上記の7日は誤記で、"子/鼠"、つまり、農歴7月ではないかと思う。

成式が、どうして、こんなつまらぬ話を気にかけるのかといえば、鼠駆除の呪術がそこらじゅうで行われていたからだろう。
その結果、まともな記述の書は無視され、施策に生かされることもない。それどころか、統治に役に立たぬので廃棄される運命。
一方、怪術リストを記載した道教書籍は大事に保管され、官僚は、それに基づいた行事を進めることに血道をあげる。それこそが、統治の肝でもあるからだ。結果など、どうでもよいのである。

おそらく、一番気にさわったのは、多くの呪言の最後についている「急急如律令」の句。
これは、律令の布告文の最後に付く、"急ぎ施行せよ"という常套句。鼠にまで、決まったから早急に従うべしと警告を与えるようなもの。およそ馬鹿げていると感じてしまうが、中華帝国の文化的土壌ではそうはならない。神霊、聖地、教団組織、とすべてを官僚的ヒエラルキーに組み込まずにはいられない風土だから、違和感など生まれようがないのである。

当然ながら、様々な術が用意され、官僚が認定することになるのである。
例えば、孫思[581-682年]:「千金翼方」卷第三十 禁経下 狗鼠第十九には、禁鼠令出法、作初越集鼠法、去鼠法、解放鼠法、禁鼠耗并食蚕法が記載されている。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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