表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.11.16 ■■■ 動物紹介(補遺)今村が収載に踏み切った佚文で、「支動」にあったかも知れないものをあげておこう。但し、出処が「白孔六帖」ということで。 この本は、もともとは白居易が指示して作らせた典籍からの抜書きメモ帳。様々な人がそれに書き加えていって出来上がったものだから、信頼性は乏しい。 しかし、酉陽雜俎出とされる内容は、「支動」にあったとすれば、比較的合点がいくものばかり。但し、トンデモ話も1ツあるが、それは龍である。 先ずは【毛類】から。 明月兎 状如兎 前脚長數寸後脚長尺餘 尾長白而彎 趫㨗善走 出河西 [白孔六帖卷九十七 兎十二@欽定四庫全書] 随分と大きい躯体だが。早くに絶滅した夜行性の穴兎系動物と見て間違いなかろう。喰いつくされたのだと思う。 家兎には、ベルギーで開発された中型犬程度の大きさの兎がおり[巨型花明兔/Flemish Giant]、野生種でも条件が合えば、巨大兎が存在してもおかしくないからだ。 それに、場所が河西であり、"非蹄系の足を持ち、非肉食で、毛で被われているとなれば、鼠か兎系しかありえない。 鼷䑕 北方冰下䑕也 其尾毛所 在處能聚集天下䑕 [白孔六帖卷九十八 鼠四@欽定四庫全書] 鼷䑕は現代の辞典では廿日鼠/mouseとされているが、氷の下に棲息する訳がない。 しかし、寒帯に棲む旅鼠/Lemmingの一種は、冬眠もせず、雪に穴を掘って巣穴にしていることが知られている。当然ながら、北極狐の大好物。 気温の関係からか、短尾深密毛。 理由はわかっていないようだが、抜群の繁殖力なので、数年おきの驚異的な数での大発生が知られている。その結果、とんでもない大群が一気に湖に突入したりする。(泳げるから、集団自殺ではない。) 続いて【羽類】。 鴇也 遇鷙鳥能激糞衘之 糞着毛悉脱 [白孔六帖卷九十五 鴇九@欽定四庫全書] 鴇とは、朱鷺[トキ]/Crested ibisのこと。野生はほぼ絶滅と見てよかろう。 天敵は猛禽類でなくヒトである。野生の生態は失われているので、糞付け行為がはたして存在するのかの確認は難しかろう。ただ、自らの羽に褐色系の分泌物を塗ることが知られており、それを指しているのかも。その目的を探ることもすでにできない状況だが、幼鳥を護るための、猛禽類忌避物の可能性もあろう。 四時有人 [白孔六帖卷九十五 鳩二十五@欽定四庫全書] 鳩が人好きというか、餌を頂戴に人の側にやってくるのは古代からの習慣。 すでに伝書鳩が実用化されていたのだから。 鷹相同G 唯欲尾長 翅短爲異耳 [白孔六帖卷九十四 鷹十一@欽定四庫全書] 鷹の薀蓄ではピカ一と任じていたということ。 残り。 鼈 為曜數食可長髪 [白孔六帖卷九十八 鼈十八@欽定四庫全書] 鼈は中華鱉ことスッポン。 この説の発展形を、実用ハウツー本的な汪昂:「本草備要」@1682で見ることができる。血余ということで髪に良いとされている。腎を養うということ。 髪に着眼している訳ではなく、精気が弱らないようにすれば、腎のバロメーターたる髪の老化も防げるという論旨のようである。 桐城縣百姓胡舉家有青龍 鬭死於樹中 鱗鬛皆似魚 唯有髯長二尺 雙角各長二尺餘 [白孔六帖卷九十五 龍三十四@欽定四庫全書] これはなんとも。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2016 RandDManagement.com |