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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.11.22 ■■■

琥珀

琥珀/Amberは、沖積土で発見されるが、一見したところは貴石。
ところが、150℃で軟化し、250℃を越えると溶け始めるから、樹脂由来であることはすぐにわかる。

その名称から見て、虎が多く住む辺りが産地だったのであろう。(雲貴〜広西〜福建の森や竹藪)
"珀"とされるが、玉偏なのは当然としても、色は黄褐色が多く、白色はありえまい。確かに、色にはかなりのバラエティがあり、樹脂的光沢があるとはいえ。
そうなると、これは音の当て字であろう。常識的には、もともとの漢字は"魄"ということ。虎死して魄を残すと言ったところ。
実際、虎は死んでから幽霊になって現れると。つまり鬼。死んだ場所の土のなかには、琥珀のようなものありとされている。

虎初死,記其頭所藉處,候月K夜掘之。
欲掘時必有虎來吼擲前後,不足畏,此虎之鬼也。
深二尺,當得物如虎珀,蓋虎目光淪入地所為也。


「酉陽雜俎」[卷十一 廣知]では、一説を引用し、それを龍血としている。・・・

或言
  龍血入地為琥珀。


メノウ[瑪瑙]の場合は、馬の脳髄と見なされたが、それは鬼の血と言われている。
となれば、コハクは虎の魄だが、それは龍の血が一番似つかわしかろうとの説はわかり易い。

馬腦,鬼血所化也。

昆虫が閉じ込められている琥珀は、それほど珍しくもないから、蜂が入っている場合も多かっただろう。

《南蠻記》:
 “寧州沙中有折腰蜂,岸崩則蜂出,
  土人燒治以為琥珀。”


しかし、成式が、琥珀が樹脂からできていると看破していない筈はなく、楓の膠のような樹液が発祥との記述もしっかりと同時収載している。

《玄中記》言:
 “楓脂入地為琥珀。”


それに加えて、桃汁とのご愛嬌話も。(瀋=汁[説文解字])確かに、樹液同様と言えないことはない。
装身具にしたくなる、まさに世俗的な解説と言えよう。

《世説》曰:
 “桃瀋入地所化也。”


さらなる一発も。

《淮南子》雲:
 “兔絲,琥珀苗也。”


兔絲/根無蔓[ネナシカズラ]は寄生植物。発芽時には根があるが、やがて根を失う。一族繁栄祈願に最適な絡み合いの姿であり、道教的チャームにピッタり。宣伝用コピーとしては秀逸。

但し、恣意的に、以下の話には触れなかったのである。

玉之精為白虎,
金之精為車渠。
 楓脂千為琥珀。
銅之精為奴,
錫之精為婢,
 松脂千為茯苓。

[梁 孝元皇帝撰:「金樓子」卷五 志怪篇十二]

老君《玉策》云:
 「松脂入地千年作茯苓,
  茯苓千年作琥珀,
  琥珀千年作石膽,
  石膽千年作威喜。」

[唐 馬總:「意林」卷四 抱朴子四十卷]

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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