表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.11.24 ■■■ 食草殺人陶弘景[456-536年]:「登真隱訣」から引いたのだろうか。《隱訣》言,太清外術:--- [卷十一 廣知] ここに、穏やかならざる"殺人"話が書いてある。・・・ 瓜兩鼻兩蒂,食之殺人。 ま、蔕[へた]を食べる人はいないが、瓜毒で人が死ぬとは驚きである。 ただ、甜瓜/真桑瓜/Chinese melonの蔕には、確かにMelotoxinと名付けられた毒性成分が入ってはいる。蔕近くの部位にうっすらと苦味を感じさせることがあるのは、その影響だろう。瓜類の特徴かも知れぬ。 もっとも、未熟なトマトの蔕でわかるように、甜瓜の実も未熟だとtoxin濃度はかなり高い可能性はあろう。 しかしながら、この一文は、そのように解釈すべきではないのかも。 もともとが、"外丹"の術だからだ。その典型は、水銀と鉛の服用だから、これもそのような極端な服用を意味していそう。 十分乾燥させて成分を濃縮した蔕を沢山服用する時は注意しろということ。 殺人話はもう一本ある。・・・ 堇,黄花及赤芥,殺人。 なんだコリャ。 スミレの花は、サラダで食べたりする。 それを考えると、およそ考えにくいが、黄色の花は特殊ということかネ。 黄色の花としては、こんなところ。 堇菜/坪菫 黄花堇菜/黄菫 雙花菫菜/黄花駒爪 単に引いてきただけ。(スミレの種の判別は素人には無理である。) スミレではなく、ツボスミレだとはいえ、これらに特別な危険性があるとは思えない。 う〜む。 そうか。 これは、野辺の"可憐な"すみれ系統ではなく、「すみれの花咲く頃」の"薫る"スミレを指しているのか。香り成分があるから、かなりの量の生理活性物質がある筈だし。どのような作用があるのかはわからぬが。 ちなみに、香堇菜/匂菫/Sweet violetの含有物は、Phenolic glycodides(incl. Gaulthern)、Saponins(Myrosin & Violin)、Alkaloid(Odoratine)。[@Andrew Chevallier:"Encyclopedia of Herbal Medicine" 3rd Ed. Penguin Random House 2016] 圓三色堇/パンジー/Pansyも同根の栽培種だから同様であろう。 アルカロイドの量がわからぬが、"外丹"の術なら、一山の花弁から成分を抽出して服用したりしかねないから、ありえる話としておこうか。 芥は、何を指すのかわからん。 ここらの話は後世にどう評価されているのか、参考に眺めてみると、流石に"殺人"は止めたようである。 瓜兩蒂、兩鼻害人。瓜瓠正苦有毒。 檐溜滴著菜有毒。 堇黄花害人。 芹赤葉害人。 菰首蜜食下痢。 [宋 唐慎微[960-1279年]:「證類本草」卷第十一 諸草有毒] ここでは、芥が芹とされている。芹の葉は赤くなることはないと思うが。赤くはないが、しばしば間違って食べてしまう毒芹を指しているのかも。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2016 RandDManagement.com |