表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.11.29 ■■■ 悲しき舞草音に反応して葉を動かす、高さ1m程度のマメ科植物があるゾ、という物知り話が毎年のように紹介される。音を聴いて踊るということで名前も"舞萩"。[e.g. 「読売KODOMO新聞」2015年7月2日] 常識で考えれば、植物に聴覚器官は無い。自発的にかなり速く動くのでそう思うだけだと思うが、情報不足なのでなんともいいがたし。 熱帯植物であるが、特段珍しいものではなく、知識が広がっていないので、記事になるのである。それに、大きな葉は動かないので、インパクトが弱いせいもあろう。 しかし、ダーウィンの著"The Power of Movement in Plants"には登場しているのだが。 おそらく、この植物の存在を記載した初出本は「酉陽雑俎」。・・・ 舞草,出雅州。 獨莖三葉,葉如決明。 一葉在莖端,兩葉居莖之半相對。 人或近之歌及抵掌謳曲,必動葉如舞也 雅州[四川]産。 茎は単独で、三枚葉。葉形は決明類似。 一枚の葉は、茎の端。 他の二枚が、茎の半ばに、対称的に付いている。 人が近づいて唄ったり、手を叩いて曲を囃すと、 必ず舞うが如くに葉を動かす。 もちろん、これは舞草/舞萩/Telegraph plantであって、決明/胡草/Chinese sennaや虞美人草/雛芥子/Corn poppyとは何の関係もない植物。 ご想像がつくと思うが、歌いかけると、舞い始めるというのは伝説。・・・ 傣族の美麗善良な少女が、舞踏をこよなく愛していた。すべての集落を回って素晴らしい舞を披露し、人々を元気付けていたが、悪漢に囲われ者にされてしまう。隙を見て逃亡するが、瀾滄江/メコン川で溺死。人々が葬ったところ、草が生えて来た。 もともとの地での絶滅を逃れるために雲貴高原を越えてメコンまでやってきたが、それでも自由に舞うことさえも難しい時代があったことを伝えるものと見てよかろう。 中華帝国の統治スタイルだと、独裁者は、歌舞についても危険視して統制したがるもの。従って、これはどうにもならないのである。 圧制者の抑圧を逃れ、大移動をくりかえしてきた民族が大切に伝えてきた悲しい民話を収録しておかねば、ということであろう。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2016 RandDManagement.com |