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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.12.13 ■■■

盗人足 or 鬼矢柄?

茸/菌類の観察に目がなければ、これは外せないと思われるのが"共生"話。思った通り収載されている。

こんな風に書いてある。・・・
2つの生き物が相思相愛状態で一体化して生きているように思ってしまうが、その実態は違っており、両者は物理的には分かれている。「気」で繋がっているのだ。
実によく見ている。

合離,
根如芋魁,有遊子十二環之,
相須而生,而實不連,以氣相屬,
一名獨搖,
一名離母,
言若士人所食者,合呼為赤箭。

  [卷十九 廣動植類之四 草篇]

4つも名称が並ぶ。
そのなかでは、"獨搖"という名称が、一番根源的そうな印象を与える。独立して揺れている情景を現す用語をそのまま名称に転用したのであろう。
魏興 錫義山 多生微草,有風不偃,無風獨搖。
  [梁 任ム:「述異記」卷上]

無風に近くても揺れることに注目しているのだが、それは根の状態が特殊だから。"合離"とか、"離母"とは、それを意味していよう。
つまり、親根らしきものがあったりもするが、草の根はそこに繋がっていそうな時もあれば、完全解離していることもあると。離れていると言うか、根が無いのであるから、ブラリブラリと揺れることになる。
その様子は、八ッ頭のような"芋魁[親芋]"と"遊子[子芋]"の関係に近いというもの。

当然ながら、これらの名称は通俗的なものであり、この植物をどう使うべきを決める道教の方々が与えたお墨付き用語は、食用にしている人達が呼ぶ名称の"赤箭[赤い色の矢柄]"。もちろん、色と形状から来ている。

和名に類似のものがあるから、この草がなにかは、ここで想像がつく。
「鬼之矢柄」である。

おそらく、鬼的霊気あるということで赤色でもあるから、赤箭から、この名前に変わったのであろう。別名もあり、古そうなのは、神之矢柄。効用は知らぬが、人気が上がって、神に祭り上げられたのだろう。その後、人気を喪失し、その呼び名は捨て去られ、盗人之足となったようだ。これが現在一番通る。
抜き足、差し足、でフラフラ揺れるという"獨搖"に近い用語に戻ったことになろう。

この植物、亜高山の雑木林の木陰に生える腐生性の蘭。
楢茸と共生しており、草丈1mで先端に淡黄赤色の花が咲く。茎も同色。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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