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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.12.17 ■■■

タケニグサの毒

聞いたこともない名称の毒草の話がでてくる。・・・

博落廻有大毒,生江淮山谷中。
莖葉如麻。
莖中空,吹作聲如勃邏回,因名之。

  [卷十九 廣動植類之四 草篇]

博落回/竹似草 or 占城菊[チャンバギク]/Plume poppyは、芥子の仲間で、中国大陸南部や日本では珍しくはない植物。

日本では、"大毒"と騒ぐことがないのは、間違って口に入れても食べる人などいないから。中華帝国は、不老長寿を願って、無理しても服用しかねない風土だからそれは通用しない。
毒性の強さをどのように測るかで、見方は変わるもの。

実際、"小毒"としている書もある位で。
  「本草拾遺」:有大毒・・・「酉陽雜俎」はここから引いたか。
  「四川中薬志」:苦辛 温 有大毒
  「湖南薬物志」:辛澀,寒,有小毒。


"小毒"としているのは、少量だけ無理に飲むことで、駆虫効果を期待したからであろう。
一方、"大毒"だから、避けるということもなさそうな社会である。「殺」効果が大いに期待できるということで、大いに外用的に使っていた可能性は高そう。

それにしても、中国名も和名も、圧巻と言わざるを得まい。
まるっきりのナンダカネの類。呆れかえる。

どう見たところで、"莖中空"という以外に、竹に似ている点など無い。高く伸びるのは確かだが、日本的な竹ではなく、東南アジアの株立型の繁茂。
そういう点で葉は毛羽があり菊と似ているからチャンパ菊という言い方には一理あり。ところが、渡来植物ではなく自生種とくる。ただ、萬葉集には、該当する単語は登場しないようだから、気にはなるが。

博落回に至っては、信じがたき命名である。
この草は折ると黄色の汁が染み出てくる。大毒と言われている草だというのに、そんなものを口につけて吹いてどうするつもり。
マ、世の中、好事家はいるものだが、吹くと"勃邏回"のような音が出るという。一体全体、それにどんな意味があるというのだ。
それでも、これがチャンパ音楽なら、なにかありそうな感じがしないでもないが、北狄樂らしい。
《新唐書 禮樂誌》:
  金吾所掌有大角,即魏之'簸邏回'

  [大順:「論“北狄樂”的發展與變遷」]

そうなると、北狄たる蟲を音で呼び寄せ、草毒で殺してしまおうとの駆虫薬のオマジナイか。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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