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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.12.20 ■■■

常山北の護門草

護門草の話がでてくるが、どのような草か全くわからない。
その名前が登場する詩は知られているのだが。・・・

「寓直中庶坊贈蕭洗馬詩」  梁 王
龍楼實九重,薄寒殊復早。
玉階泣清露,銅池結秋潦。
霜被守宮槐,風驚
護門草
之子擅文華,縱横富辞藻。
舒錦慚光麗,握珠謝奇宝。
愧予非工文,何用披懷抱。


「酉陽雑俎」には、採れる場所だけが記載されている。・・・

護門草,常山北。
草名護門,置諸門上,夜有人過輒叱之。

  [卷十九 廣動植類之四 草篇]
護門草は常山の北に生えている。
この草、門の上に移植すると、夜に不届きな輩が門から入ろうとすると叱る。だから護門との名前。


この後、この草の話はどういう訳かパタリと無くなり、後世の人々も、段成式が書いた以上のことは何も語れないのが実情。

そのままにしておいてもつまらぬから、少し考えてみよう。

まず、棲息場所だが、河北曲陽にある大茂山[1,898m]。その又の名は神仙山。古名は北岳恒山だったが、漢 文帝が改名し常山に。

この地は現在でも北方野趣ありと。
原生林的風情を残している訳で、"恒山積雪"は著名的唐県古八景之一だそうである。

これだけで、どんな植物かを推定するのは無理がありすぎるが、小生は、(纈草) or 満山香/鹿子草[カノコソウ]/(Valerian)を推したい。
"纈"とか、"鹿の子"とは蕾が絞り染めに見える故の命名。
西洋の当該種は、ギリシア時代から薬用として知られており、Garden heliotropeと呼ばれる位の芳香を放つ草。東亜の種についても、中国語で満山香という別名があるから同様だろう。

つまり、そんな香が鼻をつけば、お前はナンダと問われている気にもなるのではなかろうか、との推定。

以後、名前が消えてしまったのは、後宮でその薫をお好みの方がでてきたからだろう。そうなれば、即座に"護門草"は死語にせい、との命が下ることになること必定。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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