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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.1.4 ■■■

紙八手

通脱木の話が書いてある。
この樹木はそれなりに知られているようで、どうして収載に踏み切ったか、考えあぐねていたが、わからないのでとりあえず書いておくことにした。・・・

通脱木,如麻,生山側。
花上粉,主治惡瘡。
心空,中有,輕白可愛,女工取以飾物。

  [卷十九 廣動植類之四 草篇]

この樹木は、日本でも、いかにも亜熱帯植物的な群生がところどころに存在しているので、知る人も少なくない。
考えてみれば道路側から、繁殖しているのを見かけたことしかなく、確かに山側に生えるというのは"気分"的に合っている。

or 天麻子/紙八手/Rice-paper plantと呼ばれているが、簡単に言えば、大型だが艶のなき葉のヤツデである。周囲の植生とは風景的に全く馴染まないから、嫌われモノかも。

花というか、実がつく箇所は、ヤツデのミニアチュールを集合させたようなもので、触ったことはないが、見かけは確かに粉吹き的。漢方薬解説には、茎の心髄についての話だけで、こちらの方は無視されている。成式がわざわざ記載したのは、リグニン成分のガーゼ的な役割が期待できるから役に立つゾとの指摘か。

茎の髓は白色、フエルト的で緻密に詰まっているが柔軟性あり。
工夫すればハット用材料に最適だと思うが、東アジアでは市場性は無いか。どもあれ、丈夫な用紙材としては広く用いられていたようだ。英語名から見て、薄く切って乾燥させた製品だろうから、通常の紙のような使い方とは異なっていそう。
唐代から、心材を使った飾物加工業者が存在したようだ。造花人気の時代だったか。

尚、麻に似ていると記載されており、文字的には蓖麻/唐胡麻/Castor beanのようだが、感覚的にはよくわからぬ。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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